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食の未来は大丈夫か?

種子開発は対暑性、耐乾性が重要に

2008年7月22日

キーパーソン・インタビュー/坂田 宏
聞き手=加藤 秀雄

坂田 宏(さかた・ひろし)
サカタのタネ取締役社長

1952年神奈川県生まれ。74年慶應義塾大学経済学部卒業、同年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行、81年坂田種苗(現サカタのタネ)入社、90年サカタシード・ヨーロッパ(現:ヨーロピアン・サカタ・ホールディング)総支配人、98年サカタのタネ取締役社長室長、2005年常務取締役、2007年6月社長就任。創業家の3代目にあたる。

周年栽培できる野菜は
市場のニーズでもある

● そういうことなのですね。季節感とか旬という点では、一年中出回る野菜もできてきていますね。

坂田 宏氏

坂田 うちでは40年ほど前に周年栽培できるホウレンソウの品種開発に成功し、今では1年中ホウレンソウが出回るようになりました。ホウレンソウはそれまで、5月から6月、7月と日が長くなる時期に抽苔(ちゅうたい)といって、交配の準備のために、とうが立ってくるのですが、そうなると商品価値はゼロです。このため、昔は秋蒔きのものしかなかったのですが、抽苔がなるべく出ないようにしたり、秋蒔きは寒さに向かうので早く成育する、春蒔きは暖かい時期に向かうのでゆっくり生育するような性質を入れ込んで品種改良、いや、育種したわけです。大根も昔は冬の食べ物でしたが、今は春も夏も食べられるような品種を開発してきました。

● 品種改良と育種は違うのですか。

坂田 品種改良というと、今あるものに若干手を加えてという感じですが、われわれはゼロから新しい種を作っているということで、育種と呼んでいます。研究者は品種改良というと、嫌がります(笑い)。研究開発の企業ですから、そこはきちんと使い分けます。周年供給ということは、外食企業などで、これができないとレシピ展開ができない、という面もあります。年間を通して、同じメニューをお出しできないと、ということですね。

● そういうことは、消費者がわがままになっているわけですね。

坂田 いえ、消費者の要望です(笑い)。

● そうなると、「この野菜は春にしかできない」といったような、時代に逆行するようなことはできないということですね。

坂田 そうなりますね。私たちの仕事は、農業の振興や、食生活の向上ということにも深く関わっていますからね。周年栽培ができるような品種の開発の一方で、その作物の本来の旬に時期には、いかに美味しくするかという味を極めるような品種の開発も行っています。また、トウモロコシでは86とか88と、種蒔きから収穫までの日数を入れた品種もあるのですが、これは種蒔きの手間の軽減を考えながらも、出来るだけ新鮮な状態で農家さんの方が出荷できるようにしたものです。2日ずらして蒔けばいいではないかといわれそうですが、2回に分けて種を蒔くのは、農家さんにとって大変な負担になる。それを種子の違いで、収穫期を2日ずらせるようにしたものです。

● 種のレベルで、そこまで芸の細かいことをやっているのですね(笑い)。肥料も手がけていらっしゃるのでしょうか。

坂田 自分で肥料工場を持っているわけではありませんが、肥料はやっています。肥料メーカーと共同開発したオリジナルな肥料は「サカタ」ブランドで売っているものもあります。また土壌改良剤なども手掛けています。種が出来たから、これをまいて、収穫してくださいというのではなく、土壌から肥料、資材まで、さらには講習会という形での栽培指導と、一貫した関わり方をするようにしています。

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