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食の未来は大丈夫か?

狭い定義をせず、幅広いスタンスで日本食の海外普及を図りたい

2008年8月20日

キーパーソン・インタビュー/茂木 友三郎
聞き手=加藤 秀雄

茂木 友三郎(もぎ・ゆうざぶろう)
キッコーマン会長

1935年千葉県生まれ。58年慶應義塾大学法学部卒業、キッコーマン入社。95年同社代表取締役社長兼CEO、2004年代表取締役会長兼CEO。07年日本食レストラン海外普及推進機構理事長就任。米国コロンビア大学の経営学修士であり、キッコーマンの海外展開をつぶさに見てきた。

「日本食が変わった」ことが
日本の食料自給率を下げている

● 日本食がこれだけ世界に広がる一方で、日本の食料自給率は先進国の中でも飛びぬけて低い水準にあります。

茂木 友三郎氏

茂木 それは今、日本人が食べているものが「日本食」ではなくなってしまったからです。コメを食べ、地産地消で地元の野菜を食べてといった食生活に戻れば自給率も戻ります。別に「肉を食べるな」などと言っているのではありませんが、昔の食生活の形を参考にするといいですね。そうすれば健康面からも良い。

● 日本の食料自給率を引き下げているのは、家畜の飼料としてとか、キッコーマンさんもそうですが、食品の原材料としての穀物輸入が、大きなウエートを占めているといわれます。

茂木 そうです。全体的に、栄養バランスが変わったことと食料自給率が逆比例しているのです。コメを食べているときは自給率も高かったのですが、肉をたくさん食べるようになって自給率が下がったのです。コメの良さをもう一度見直すべきですね。米国ではポテトよりも、コメを野菜としてたくさん食べる人がいるくらいですよ。ダイエットになるといって。コメは健康に悪いとか、ご飯を食べると太ると思っているのですかね。

● いやー、それはないと思いますが。ただコメの良さとか、発酵や生食といった日本の食文化の優れた点を、海外だけでなく、国内に向けても啓蒙しなければいけないですね。

茂木 それが今いう食育なのでしょうが、子供だけでなくそのお母さんたちも含めた形での啓蒙が必要になってくるでしょうね。

● ただ、農業や漁業の担い手がいないなど、国内の農林水産業も多くの課題を抱えていますよね。

茂木 農業などは、生産性を高める必要がありますね。農業分野でも自由化の波がどんどん広がってくるでしょうから、今までのような「守りの農業」から「攻めの農業」へと変えていくことが必要ではないでしょうか。そのためには、担い手を育てなければなりません。それには農地を集約して面的な広がりを持てるようにしなければいけない。そちらに政府が進みかけたと思ったら、また今、バラマキに戻ろうとしているところがある。ちょっと心配です。小さいところにお金をいくらつぎ込んでもだめで、転職する農家の方には転職のための援助をするとか、別の方策を考えなければいけませんね。

● 民間企業に対する農地解放といいますか、それもようやく少しずつ進んできていますね。

茂木 これもどんどん進めていくべきですが、やはり面的集約というものがないと出来ませんね。

● 食品メーカーや外食企業の一部に、農業分野に出る、いわゆる「川上上がり」の動きがありますが、キッコーマンさんとしては、このような動きに対して、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

茂木 うちの場合は大豆と小麦でしょ。相手がアメリカですから、国内ではとてもかなわないですね。

● 野菜などを手がけるというのは。

茂木 今のところはまったく考えていません。長期的には分かりませんがね。

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