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衛生・クレンリネス

細菌が繁殖しにくいクックチル

大量生産時に、調理の効率化が図れる

2006年5月22日

クックチルシステム(以下、クックチル)とは、一度加熱調理した料理を、細菌が繁殖しにくい、低い温度まで短時間に急速冷却して保存し、提供時に再加熱するシステムのことをいう。

従来、加熱調理した料理を保存する場合には、室内に料理を放置し、常温まで冷めるのを待ってから冷蔵庫に入れていたが、この方法だと料理が冷えるのに長時間かかる。料理は傷みながら、細菌が繁殖しやすい温度帯をゆっくり通過するので、衛生面に不安が残る上、再加熱した料理の食味も落ちてしまう問題があった。

これに対し、クックチルは、専用の急速冷却機を使って、料理の中心温度(芯温)を細菌が繁殖しにくい温度まで短時間で下げるため、料理を衛生上安全な状態で長期間保存できる。しかも、急速に冷却するため、料理の劣化が少ない。料理によって向き、不向きはあるものの、再加熱しても、味は調理直後とほとんど同じとされている。

衛生的に優れているので、クックチルを活用すれば、余裕のある日や時間帯に、忙しくなりそうな日の料理を作り置きし、厨房作業の繁閑差を減らすことが可能になる。一度に大量の調理を前提とする給食、宴会などに向くシステムといえる。

クックチルは1960年代後半にヨーロッパで開発されて以来、ホテルの宴会部門、コンベンション施設などを中心に、欧米で普及してきた。

先進国といわれる英国の場合、冷却温度や時間、食品の賞味期限、保存方法などについて保健省が厳密な基準を定めている。例えば、「料理は90分以内に、芯温30℃以下まで冷却する。賞味期限は生産と消費の日を入れて5日間」といった具合だ。

日本にはクックチルの衛生基準はないが、重要な役割を果たしているのが、HACCP(=ハセップ、危害度分析による衛生管理)だ。

HACCPの正式名称は、「Hazard Analysis and Critical Control Point」。食品の安全性を保証する上でのすべての危害を洗い出して(HA=危害分析)、調理工程における重要管理点(CCP)を決めて監視測定・記録をし、管理基準に達しなかった場合の措置までを定めた衛生管理システムだ。1960年代に米国で生まれ、今や衛生管理のグローバルスタンダードとなりつつある。

クックチルの最大の特徴は、衛生管理を徹底するため、調理の温度と時間をコントロールし、それをきちんと記録していくことにある。感覚でやってきた調理というものを完全にシステム化してしまうわけだ。それゆえ、真空調理法と並び、新調理システムとも呼ばれる。

日本では大型施設で、厨房作業の効率化を目的としたクックチル導入が目立つが、さる大型ホテルでは早くから、1週間単位で必要な料理と食材を事前に調べ、計画的に発注や調理をする計画調理システムを採用し、その実現の手段にクックチルを使った。「調理スタッフの作業習慣を変えるのに時間がかかったが、今ではシステムがうまく稼働し、厨房スタッフの完全週休2日制を実現できた」と、そのホテルの調理長は話す。

また、現在ではセントラルキッチンで完全調理した料理を、クックチルで保存し、冷蔵車で数カ所のサテライトキッチンに配送することで、効率化と衛生管理を実現するという使い方も出ている。厨房が小さく、メニュー数が多い一般の飲食店には、運用の負担が大きいが、考え方は十分に役立つ。

(日経レストラン編集部)