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採用・教育

マニュアルはどう作る?

まず店の決まりごとを決め、次に作業手順へ

2006年2月20日

マニュアルとは、作業手順を示した手引書のこと。飲食業ではサービスの手順や調理の工程などを文書化した作業マニュアルを指すことが多いが、実際には働くメンバーが守るべき就業規則などのルールを示した基本マニュアルや、作業の段取りを示したオペレーションマニュアルも重要なマニュアルの一つである。

まず作るべきなのは、基本マニュアルだ。店舗面積や席数などの店の基本的な概要や、店舗を運営する上での体制、働くスタッフが守るべき規則、店のコンセプトなどが該当する。「店の決まりごと」と言い換えてもよいだろう。

この基本マニュアルは、オペレーションマニュアルや作業マニュアルを作る上での土台となる。例えば、店のコンセプトとホールの作業マニュアルを例に考えてみよう。コンセプトが「魚を中心とした新鮮な素材をゆったりとした雰囲気の中で、時間をかけて食べてもらう」となっていれば、サービスはできるだけ丁寧にする必要がある。とすると、お客への挨拶は、大声を出すよりは比較的落ちついた声にしたほうがよいし、オシボリもビニール入りの紙製のものをテーブルに置いておくよりは、布製で熱々のものをスタッフがほぐしながらお客に渡した方がふさわしくなる。

オペレーションマニュアルは、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」するのかを決めるマニュアルだ。作業マニュアルが個々人の作業を「どうやるか」説明するのと違い、運営のルールやスタッフの役割分担を示すものといえる。

開店作業を例にとれば、「店の裏のドアを鍵で開けて中に入り、鍵は所定の場所にかけておく」というのは作業マニュアルだが、「店を開けるのは、その日の店舗責任者で、それは開店時間の最低1時間前にすませておく」というのはオペレーションマニュアルになる。

実は、実際の店舗運営で重要なのは、このオペレーションマニュアルだ。お客のお迎えは誰がやるのか、オーダーはどのタイミングで誰が取るのか、クレームは誰が対応するのか——。店の運営が混乱する大半は、オペレーションマニュアルがきちんとできてないことが原因のことが多い。

理想的には、想定通りに店が回っている時のマニュアルだけでなく、万が一のことが発生した非常時にどうフォローしたらよいかまで触れておきたい。店長が急用で休んだ時は誰が代行するのか、アルバイトしかいない場合は誰の判断を仰げばよいのか、といったことだ。

店の根幹を形作っている基本マニュアルと違い、オペレーションマニュアルは、状況に応じて、臨機応変に変えていく必要があるものだ。一度、作成したからといって、放っておかず、随時見直していくことが大切だ。

作業マニュアルは、大きく言うとキッチンでの調理マニュアルとホールでの接客マニュアル、それに、現金管理の仕方などを記したマネジメントマニュアルがある。実際にやっているものを文章化するわけだから、比較的簡単そうだが、作業そのものは膨大にあるため、まず盛り込むべき作業の洗い出しが必要となる。

調理マニュアルは、レシピがあれば、それを元にできるし、なくてもメニューブックを見て各商品の調理手順を書けば、基本的には作れる。また、接客マニュアルは、一人のお客が来店してから帰るまでの流れに沿って洗い出せば、まず漏れはない。

ややこしいのはマネジメントマニュアル。これには、「従業員管理」「商品管理」「機器メンテナンス」「売り上げ管理」「顧客管理」と五つもの業務が含まれ、洗い出すべき作業が多岐にわたるからだ。

一つの方法は、5~6人に100枚綴りの付箋を一つずつ渡し、「朝、前日の売り上げを数える」「入金に行く」など、具体的な作業を思いつくまま、書いてもらう方法。その上で、五つのどこにどれが属するかを分類すれば、大体の作業は網羅できる。

作業マニュアル作成に当たっては、まず、パッと見て分かりやすい作りを心がけよう。説明は簡潔に、できれば写真入りが理想だ。新人の即戦力化を図る意味でも、手順だけでなく、作業のコツも盛り込みたい。

もう一つ、気を付けるべきは、「こうあるべき」という理想論に陥らないこと。例えば、手洗いは15分に1回行い、30秒以上はもみ手洗いをすべきといわれるが、スタッフの人数に余裕がない忙しい現場で徹底するのは現実的に不可能。どんなに基準が正しくても、実行されなければ意味はない。少々基準を緩やかにしても、スタッフが無理なくできるレベルを意識した方がベターだ。

もう一つ、より良いマニュアル作りのためには、実際に使う店長や従業員自身が作るのが一番良い方法だ。現実に即した内容になるし、何より自分達で作ったものであれば、一生懸命役立てようと考えることになる。

(日経レストラン編集部)