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採用・教育

従業員をやめさせたい!

法的には客観的な合理性が必要。冷静な話し合いを

2007年1月11日

店の業績が悪化して、手を打ち尽くした時、思い当たるのは従業員のリストラ。労務関係の用語では「整理解雇」と呼ぶ。その際、経営者は解雇する労働者に対し、少なくとも30日前に解雇予告をする義務があり、予告をしない場合には、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があると労働基準法は定めている。

そのため、金さえ払えばいつでも「クビ」にできると誤解をしている経営者もいるが、判例では、企業側の理由で解雇する場合は、客観的な合理性がなければ、使用者による解雇権の乱用になるというのが多数だ。

判例で示されているのは、次の4要件。1.整理解雇をする必要性があること、2.解雇回避の努力をしたこと、3.対象者の選び方に客観的で合理的な基準があること、4.従業員の代表と話し合い、納得させる努力をしたこと、である。単に「店の業績が悪い」だけではダメで、役員報酬のカットを含め、店としてできる限りの経営努力をする必要があるわけだ。ましてや、人員削減を機に、気に入らない社員を意図的にクビにしようとしても、3.の基準に触れてしまうことになる。

ただ、これはあくまで裁判で争った例。現実的には、従業員との話し合いでやめてもらうことが多いだろう。

その場合、最も重要なのは解雇しようとする従業員に、これまでの努力と貢献への感謝を伝え、誠意を持って話し合いに臨むことだ。相手が冷静になれず、感情的になることもあるが、経営者側まで感情的になるのは得策でない。けんか別れは、最も不幸な終わり方だからだ。

けんか別れした従業員が、店に残って仕事を続ける仲間に店や経営者の悪口を伝えることで、残っている従業員のモチベーション低下も誘発しかねないし、噂が広まれば、銀行への信用に傷が付いたり、来客数がさらに減少することもあり得る。

あくまでも冷静に、誠意を持って対応することが大切だ。従業員は店舗の業績が良くないことには気づいていないことが多い。売上実績や利益の状況などを交えながら、従業員自身が「今の状況では、リストラもやむを得ない」と納得するように、進めるのがベターだ。

その際、話し合いは短期間で決着を付けるのがよい。話を切り出したその日がリミットだ。気持ちの整理がつかず、「明日まで考えさせてほしい」と言う従業員もいるが、解雇すると決断した以上、「店としては、解雇の結論を出している」旨をきっぱりと伝えよう。交渉が長引くと、外部などから様々な情報が入り、話が複雑になるケースが少なくない。社員に限らず、P/Aの場合も、やめてもらう時の注意点は変わらない。

ちなみに2003年7月に施行された改正労働基準法では、就業規則に「解雇の事由」を記載することが新たに義務付けられている。就業規則は、10人以上の労働者を常時使用する企業なら必ず作成し、労働基準監督署に提出しなければならない。解雇の事由は「勤続6カ月未満の従業員が欠勤1カ月を経過した場合」「降格、停職、減給のいずれかの処分を3回以上受けた場合」といった具合に、数字を明記するのがポイントだ。万が一のことを考え、従業員が10人未満でも就業規則を作っておいた方がよいだろう。

人事リストラは、経営者の人格が試される、難しい仕事だ。去る従業員が「この人が言うのだから、仕方がない」と感じ、残る従業員からは「この人のために頑張ろう」と思ってもらえるような信頼関係を日頃から築いているか。まさに、経営者の人間性が問われることになる。

(日経レストラン編集部)