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百年の店、百年の言葉

インドカレー カーマ

唯一無二の味がなければ、店は続きません

2011年8月3日
インドカレー カーマ

大野 弘◎1952年生まれ。高校生時代に中国料理店でアルバイトを始める。米国、カナダの日本料理店勤務を経て、95年「カーマ」を開店。人気店に育て上げた。

大野弘が「カーマ」をオープンしたのは、50軒以上のカレー店がひしめき合っている激戦区、神田神保町であった。それから早16年の歳月が流れた。ここのチキンカレーは一度食べると病みつきになる。わたしは40年余り神保町を戦場として働いてきたが、週に一回は欠かさず通ったものだ。“退役” して2年半が過ぎたが、いまでも月に一度は「カーマ」を訪ねる。困ったことに、チキンカレーの味を体が覚えてしまっているのだ。まさに知る悲しみである。

料理好きの大野弘は高校時代から老舗中国料理店の「赤坂飯店」で見習いのアルバイトとして働いていた。そのまま正社員に採用されて順風満帆の人生が始まろうとしていた矢先、大野はふらりと1人ロスに渡った。まもなくニューヨークに姿を現した大野青年は、残り少なくなった所持金を心配しながら、手当たり次第日本料理店を回り、コック見習いの仕事を得た。中国料理は万能の料理なのだ。すぐ才能を発揮してバンクーバーの日本料理店に助っ人として引っこ抜かれた。

人生なんて70%は運である。たまたま住んだアパートの大家がインド人で、独り者の大野をよく食事に誘ってくれた。大野の舌が今度はインド料理に遭遇した。いままで母親の作ったカレーしか知らなかった大野の舌に衝撃が走った。これが「カーマ」のチキンカレーの原流である。「この複雑怪奇の味は何だ」大野のカレー探求の旅が始まった。

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