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百年の店、百年の言葉

蕎麦 たじま

なめらかでしなやかで力強い。それが理想です

2011年10月5日
蕎麦 たじま

田島基行◎1971年生まれ。大学生時代は飲食店のアルバイトに明け暮れた。24歳のときから蕎麦の本格的な修業を始め、野菜料理も学び、2005年に「蕎麦 たじま」をオープンした。

「蕎麦 たじま」の店主、田島基行の実家は祖父の時代から東京・千駄木で蕎麦屋を営んでいる。出前もするいわゆる「町の蕎麦屋」である。幼い頃から祖父と父の仕事を間近に見てきた田島は、蕎麦が大好きな少年に育った。「毎日蕎麦ばかり食べて、飲み物といえば蕎麦湯ばかり飲んでいた」と言う。

昔はどこの蕎麦屋も手打ちだったが、衛生上の問題と簡便さから、機械打ちが主流になって久しい。ところがここ数年、こだわりの手打ち蕎麦を食べさせる若い蕎麦職人の店が増えてきた。

「町の蕎麦屋」の息子を本格的な蕎麦職人に変えたのは、客の忘れ物だった。蕎麦の名店が載ったその本に興味を引かれ、田島は食べ歩きを始めた。そして、いつの間にか大きな進化を遂げていた手打ち蕎麦の世界に引き込まれた。

24歳のときに、東京・森下の老舗「京金」に入り修行を始めた。その後、新橋の「本陣坊」に移り、技術を磨いていった。10年の修業の後に西麻布「蕎麦たじま」を出店したのは2005年11月。打ちっ放しのコンクリートの外壁に小さな看板を掲げるモダンな外観はいままでの蕎麦屋のイメージを覆している。

「ごみごみしたところではなく、空気感が綺麗なところがいいと思ったのです」と田島は胸を張る。最寄の地下鉄駅からは少し距離があるが、田島はそんなことをハンディとは感じていない。

毎朝7時に厨房に入り、その日の蕎麦を打つ。切り口が同じ大きさの真四角に揃うように神経を集中する。角がしっかりつくように切ると、蕎麦を食べる人の唇にそのエッジが触れる。その感覚は蕎麦の醍醐味の一つである。

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