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百年の店、百年の言葉
くじらのお宿 一乃谷
クジラを次の世代に伝えたい。願いはそれだけです

クジラ刺し盛り合わせ(左)は手前(円形の部位)から時計回りに百尋(小腸)、子宮、赤身、本皮、ベーコン、さえずり(舌)、睾丸。中央は鹿の子(あごの関節を覆う肉)。それぞれに異なる味と食感が楽しめる。クジラのステーキ(右上・右下)は驚くほどやわらかくサッパリとした味わい。

ところが、日本人はもうクジラの料理の仕方も忘れてしまった。たまにスーパーの店頭にクジラ肉が並ぶことはあるが、子供たちは慣れない味を敬遠するようになった。学校給食でクジラの立田揚げのうまさを知るのはもう50代以上に限られる。ハンバーガーの味に親しみを覚える世代の方が多くなってしまったのだ。

「一乃谷」はランチでクジラのステーキ、立田揚げ、カツ、刺身などを980円という廉価で提供している。「若い人や子供たちにまずは一度クジラを食べてもらいたい。そうすれば、必ずおいしさが伝わるはずですから」と谷は言う。

クジラの赤身に含まれる脂質は牛肉のわずか60分の1、豚肉の15分の1。クジラは高タンパク低カロリーの実にヘルシーな食材である。特に赤身に含まれているバレニンという成分は、疲労物質の発生を抑制する効果があり、また体脂肪を効率よく燃やし、肥満やメタボリック症候群の予防作用がある。

私は滋養満点のクジラパワーで深夜3時にこの原稿を書いている。

クジラを次の世代に伝えたい。願いはそれだけです

肉だけでなく内臓や皮など様々な部位が食用になる(左)。クジラを使った芋の子汁(右)は素朴な味わい。

店舗DATA「くじらのお宿 一乃谷」●東京都千代田区内神田2-7-6ゆまにビルB1F●TEL:03-3254-6096● 営業時間11:30~14:00、17:00~23:00、日曜休

島地勝彦◎作家。「週刊プレイボーイ」や「PLAYBOY」の編集長、集英社インターナショナル社長などを歴任、2008年11月から作家活動に。著書に『知る悲しみ』(講談社)など多数。過去45年間、朝食(タマゴ1個)を除き、すべて外食の生活を送る実践的食いしん坊。

(写真=稲垣純也)

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