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百年の店、百年の言葉

ソラシオ

お客様は笑顔か、厨房からのぞき見しています

2012年12月5日
お客様は笑顔か、厨房からのぞき見しています

橋本聡◎21歳で料理の世界に入る。都内やフランスの料理店で修業を積み、2008年ソラシオのリニューアルと同時にシェフに就任。右はオーナーの高橋氏。

ついにこの連載は最終回を迎えることになった。今回のレストランのオーナーはわたしの親友、高橋治之である。汐留の天空に浮かぶがごとき店ゆえ、「ソラシオ」という。高橋自らが命名した。夜景の美しさは世界一である。

よくここに若いカップルが訪れる。絶景を眺めながら、男は交際や結婚を申し込むらしい。成功率は98%だそうだ。これまでに、たったひと組のカップルが破談になった。食事の途中、女は席を蹴って「わたしはそんな気持ちでここにきたのではありません」と捨てセリフを残して帰ってしまった。取り残された男は眼下の灯りに何を思っただろうか。

料理長の橋本聡は、一見20代後半にしかみえない。が、実は40歳である。反抗期の中学生時代に、自分の分だけの料理を作り、狭い自室で一人で食べていた。そんな奇行を母親は黙認してくれた。だから橋本はいま名シェフになった。料理学校ではフランス料理を専門に学んだが、和食の店でも修業した。そのためだろう橋本のフランス料理には和の味が隠されている。顔は若作りだが、料理は老獪である。

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