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韓国レストラン展望

夏バテした現代人の疲労回復に、薬膳韓国料理

「ハンガラム 市庁駅店」

2013年8月21日

昨年、新しく生まれ変わったソウル市庁舎。市庁舎の建物の地下道へ続く通路の途中、地上でも地下でもない階段の中間、思わぬところに韓国料理レストランがある。薬膳韓国料理専門店の「ハンガラム」だ。薬膳とは、「薬」と「膳」を合わせた言葉で「薬になる料理」で、漢方医学の基礎理論に食品学、調理学、栄養学を組み合わせたものだ。日本でも最近、薬膳や漢方は若い女性を中心に注目されているが、韓国では古くからこの漢方医学や薬膳が生活と密着しており、生活に溶け込んでいる。

「ハンガラム」の特徴は3つ。「気」(中医学[漢方医学]などの用語の一つ)を生かしたメニューの提供、化学調味料を使用しない、「コンドゥレパプ」というご飯の提供だ。

まず、「気」を使った独特のメニュー。その調合を最適にするため、研究の末にたどり着いた同店オリジナル料理をそろえている。

次に、化学調味料は使わないこと。ではどのように味付けしているのか? それは、野菜などを発酵させ、その発酵液を調味料の代わりしている。主なものとして「梅の発酵エキス」や「覆盆子(ふくぼんし)発酵エキス」などがある。もちろん、韓国伝統のコチュジャンやテンジャン(味噌)もふんだんに使われる。共に野菜などから出来ているため、料理との相性もいい。
※覆盆子(ふくぼんし)とはバラ科のクマイチゴおよびトックリイチゴの未成熟果実を指す

そして「コンドゥレパプ」。日本語に訳すと、高麗アザミご飯となる。コンドゥレパプは、元は食べ物に乏しかった江原道地方の料理だ。このご飯は現代では健康食として好まれており、韓国でも人気の一品だ。

作り方は、高麗アザミを水にふやかして炊き込むのが一般的で、味は淡白。だが、ハンガラムでは特別に、胡麻油、十全大補湯(漢方薬の一種)も入れて炊き込む。これで、味と健康の双方を兼ね備えたハンガラム式コンドゥレパプのできあがりだ。

このように、同店では薬膳をふんだんに取り込んだ食事を提供している。特に7~8月の蒸し暑い時期のメニューには、疲れた現代人の健康を考え、季節と体質に合ったメニューを研究し準備している。

メニュー名は街中の韓定食と変わらない至って普通の名前であり、韓国ではありふれたメニューともいえるコングクス(冷たい豆乳スープに麺を入れた料理)だが、ハンガラム式では小麦粉麺ではなく、青海苔と蒟蒻の麺を使用、健康と肥満が気になる現代人のためのローカロリーの健康食となっている。

また、参鶏湯(サムゲタン)も提供するが、こちらは一風変わっている。「アワビ黄鶏湯」といい。これは鶏の足の部分だけと、黒もち米だけを入れた味わい濃厚なハンガラム式参鶏湯である。

「ハンガラム 市庁駅店」

「薬膳蓮の葉ごはん」はレンコン、豆、小豆、ナツメ、栗、銀杏などと雑穀を蓮の葉で包んで蒸しあげた栄養たっぷりのメニュー。このほかに、パンチャンと呼ばれる小鉢がついてくる(価格9000ウォン)。

「ハンガラム 市庁駅店」

冬のメニューとしては、メセンイトガニ湯がある。韓国の南海で採れるメセンイ(海藻の一種)とトガニ(牛の膝の軟骨)を一緒に煮込んだもので、メセンイの海の香りとトガニスープの香ばしさをベースに独特の歯ざわりを楽しみたい(価格1万3000ウォン)。

「ハンガラム 市庁駅店」

ファンテトッカルビクイ(干しスケトウダラトッカルビの焼き物)はハンガラムでしか味わえない特製メニューで、スケトウダラの肉質にこだわりがある。江原道のファンテ(干しスケトウダラ)を使い、その上に牛と豚のひき肉をのせてピリ辛のコチュジャンソースをかけたもの。魚と肉の組み合わせにピリ辛コチュジャンソース。その絶妙なバランスはここでしか食べられない(価格1万5000ウォン)

周囲がオフィス街であるうえにソウル市庁と隣接しているため、顧客層のほとんどが会社員と公務員だ。ランチタイムはビジネスミーティング、ディナータイムは会食がよく行われるが、どのビジネスパーソンも、健康管理に気になるのか、いつもお客で賑わっている。土曜日には家族連れも多く訪れるという。

1万ウォン程度の手軽な単品から2万5000~15万ウォンまでのハンガラム定食もあるので、どの時間帯でも薬膳料理を堪能できる。

まずはランチで手軽に「薬膳蓮の葉ごはん(9000ウォン)」「燻製ゆで鴨肉定食(1万2000ウォン)」「辛口炭火豚カルビ定食(9000ウォン)」などを注文してみてはいかがだろうか。現在、市庁店をはじめ、北倉店(プッチャン)、三清店(サムチョン)、乙支路店(ウイチロ)、論峴店(ノヒョン)がある。

日本人の韓国リピーターとしては、新しい味に出会える場所として注目したいレストランで、ここでしか食べられない組み合わせのメニューに挑戦したい。旅行ついでに「気」を整え、健康になって帰りたいものだ。

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店舗データ

ソウル特別市中区乙支路16地下路 CITISTAR MALL 3、4番出口の階段 TEL02-3789-9991●営業時間/ 11:30~22:00、日祝休●客単価/昼1万2000~2万ウォン、夜2万~3万ウォン●客席数/100席

文: ソウル市PR担当、文および編集 石田のり子(Granage LLP)
日本、韓国、中国を拠点にビジネスマッチング、コンサルティング、新規事業開発サポートを行う。
連絡先:http://www.granage.com/

取材協力:I tour SEOUL(ソウル市)Webサイトはこちら