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雑誌「日経レストラン」今月の特集・達人が教える店舗視察の極意

2010年8月30日

8月6日、ワタミが東京・五反田にオープンした新業態「仰天酒場『和っしょい』」。「ファストフード型居酒屋」を標榜する同店は、専用カードに現金をチャージし、オーダーと支払いは客席に置く小型の注文・決済端末を通して行うという新しいシステムを導入した。

この店のアイデアをワタミの桑原豊社長がひらめいたきっかけは、老舗の立ち飲み店を視察したこと。常連客が財布から2000円を取り出して灰皿の下に挟み、料理やドリンクを受け取るたびに、店員に代金を支払っていた。いわゆる「キャッシュオンデリバリー」だ。そこに、「Suica」や「PASMO」で普及した、プリペイド型の電子マネーを組み合わせたイメージだ。

つまり、老舗の立ち飲み店や電子マネーという、ありふれた業態やサービスからでも問題意識さえ持っていれば、自分たちのビジネスに革新をもたらすヒントが得られるということだ。

言うまでもなく、飲食業界の生存競争は激しい。2008年のリーマン・ショック以降、街の風景が一変するほど既存の店が“淘汰”され、そこに均一価格の居酒屋などの新しい勢力が陣取るようになった。食のトレンドも変化が激しい。いつの間にか「食べるラー油」を使った料理が当たり前に提供されるようになり、女性だけで飲食を楽しむ「女子会」という言葉もすっかり定着した。インターネット上のクチコミなどで一度注目されたものはあっという間に広まる。明らかに、変化のスピードは加速している。

こうした中で、より重要度を増しているのがワタミの新業態のきっかけにもなった「視察」だ。新しいものを生み出すときに、何から何まで自分だけの頭で考えていては、出遅れてしまう。既にその道で成功している店から学び、それを自店なりにアレンジして採り入れたほうが、よほど成功する可能性は高い。さらに、従業員とともに、他店を視察し、「なぜその店はそうしているのか」「なぜ自分の店と違うのか」を議論すれば、従業員の成長にもつながる。

もっとも、視察で見たことを自店の経営に生かすのは簡単ではない。ある店を見て良いと思ったことでも、この店は「大手だから」「立地が良いから」といった理由で、ウチには参考にならないと感じる経営者も少なくないだろう。今回の特集では視察を店作りに生かしている経営者や料理人などへの取材を通じて、視察先の選び方やそこから何を学ぶべきかを解説していく。

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