「日経レストランONLINE」は、「日経レストラン」の休刊に伴い、3月末日をもって更新を休止することになりました。長らくご支援を賜りました皆様に厚く御礼を申し上げます。

雑誌「日経レストラン」今月の特集・看板メニューはこう作る

2011年7月28日

1981年の創業以来、手羽先を看板にして、一大チェーンとなった「世界の山ちゃん」。手羽先は今でも売り上げの20%を占める。地元の名物料理に力を入れ、その中で差別化することが競争上も有利と説く。

山本重雄(やまもと しげお)氏

山本重雄(やまもと しげお)氏
1957年岐阜県生まれ。高校卒業後、海上自衛隊に入隊。3年後、飲食業を目指して除隊し、名古屋の居酒屋で修業。81年24歳で「串かつ・やきとり やまちゃん」オープン。「幻の手羽先」を看板に店舗を増やし、2011年7月現在、69店を展開。09年9月に社長を退任し、会長に就任

1981年にオープンした初めての店は串かつと焼き鳥の店でした。鶏が好きなのでサブのメニューとして作ったのが手羽先で、まさかこれほど売れるとは、思ってもいませんでしたね。心境としてはレコードのB面の曲を作ったつもりなのに、A面より、人気が出たという感じです。味付けはずっと同じで、変わったのは、塩を精製塩から自然塩にしたことと、タレを外注するようになったことくらいです。

手羽先の元祖は名古屋の「風来坊」というお店です。甘辛いタレとたっぷり振りかけたゴマの風味が特徴で、数多くの店がマネをしました。ところが私には技術がなかったので、マネができなかった。代わりに、辛さを強調するため、手羽先に塩を加えた合わせコショウをかけました。たまたま決めた味だったのですが、出してみたところ、お客様からも好評で、「すぐに食べてしまうから幻のようになくなる」と言われたのをきっかけに「幻の手羽先」と名付けました。

そうした私の経験から言えることは、看板メニューを作りたければ、地元の名物料理を選ぶべきだ、ということです。単純に失敗しにくいからです。手羽先の場合、数多くの店が提供することで、名古屋の名物料理になった。多くの店が出しているというのは、多くの人がその料理を好んで食べているということ。その中で、本来は甘辛い味の料理を、私たちの店は辛い味で出したことで、差別化することに成功しました。

地元の名物料理は、その地域の人はもちろん、出張や観光でやって来た人にも食べていただける。簡単に言えば、お客様が2倍になるわけで、この差は本当に大きいですよ。

以前、私たちが札幌に初めての店を出したときに大行列ができたので、札幌の人口から考えて、店を10店は出せるだろうと思っていました。実際、1年で5店舗を出店したのですが、札幌に出張や観光で来た人はわざわざ名古屋名物の手羽先を食べてはくれない。だから今、残っているのは1店のみです。その後は、新規出店を慎重にやっています。

最近、B級グルメを使って、町おこしをはかるケースが目立ちますが、地元の人にその料理を食べてもらって、さらに観光客にも食べてもらう──。これは名古屋の手羽先で自然発生的に起きたことと同じ事をしようとしているように、私には見えます。

NEXT:珍しい食材は値段を比較されない

次のページへ
日経レストランONLINE トップへ