決断のとき・八百八町代表取締役CEO 石井 誠二 編

すべての答えはそこにある
金融危機後も商売繁盛
異変を見抜き、価格変更

ステーキや鍋などの肉料理をたっぷりの野菜とともに低価格で提供する「肉屋の正直な食堂」は、2006年10月にスタートした八百八町5番目の業態である。現在、東京を中心に11店舗展開している。

最大の特徴は調理がセルフサービスという点だ。店は肉や野菜の素材を鍋に盛り付け、火を通さずにテーブルまで運ぶ。お客はそれをカウンターに埋め込まれたIHヒーターで、砂時計で時間を計りながら好みの加減に焼いて食べる。成型肉ではない良質な肉料理を少しでも安くお客に届けることを目的に、石井自身が店の基本コンセプトを設計した。

狙いは当たり、開店直後から学生やビジネスマンの支持を獲得。1号店の元住吉店(川崎市)はわずか10坪ながら、開店1カ月で600万円を売り上げた。

ただ、その人気ぶりとは裏腹に、「肉屋の正直な食堂」は、収益力が極めて低いビジネスモデルでもあった。低価格化を追求した結果、原価率が60数%まで跳ね上がり、当初のF/Lコストは限りなく100に近かった。1年半かけて、野菜のボリュームを見直すなどして原価率を40%まで落としたものの、ほとんどの店の収益はプラスマイナスゼロだった。

もともと、石井は“利益ありき”でものを考えない経営者だ。日ごろから「儲けてやろうという姿勢はお客様に見透かされる。利益率が高くても、1人もお客様が来なければ1円にもならない」と公言し、「まずはケチケチしないで、おいしいものをどんどん出して、腹いっぱい食べてもらえ。売り上げさえ稼げれば、後で食材コストや人件費などのコントロールはいくらでもできる」と社員に“利益の度外視”をけし掛ける。

その意味で、「肉屋の正直な食堂」は、石井の経営哲学を反映した業態ではあったのだが、いかんせん、利益が出ないとなると商売として考え直さねばならない。オープンから2年目に突入した08年春。石井が顧客の微妙な変化に気付いたその時、ちょうど「肉屋の正直な食堂」は、大胆な方針転換が必要な時期にさしかかってもいた。

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