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食品添加物、残留農薬、中国産食品……「食の安全」問題は誤解が多い

2008年9月4日

実践女子大学 教授 薬学博士
西島 基弘(にしじま・もとひろ)

1940年静岡県生まれ。63年東京薬科大学薬学部卒業後、食中毒などの監視や、食品添加物・農薬等の分析・研究を行う東京都立衛生研究所(現、東京都健康安全研究センター)勤務。同・生活科学部部長を経て、2001年4月実践女子大学教授に。現在、同大学生活科学部部長。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。城西大学、茨城大学などでも教べんを執る。食品添加物や残留農薬など、食品における化学物質研究の第一人者。著書に「食品添加物は敵? 味方?」(丸善刊)などがある。

写真=川田 雅弘

食の「安心・安全」への不安感が増す中、「無添加」や「無農薬栽培」をうたう食材が増えている。食品添加物や残留農薬は、本当に危ないのか? 長く食品に含まれる物質の分析・研究をしてきた実践女子大学の西島基弘教授は「許可されている食品添加物が身体に害をもたらすという説は誤解。飲食店も科学的視点で正しい知識を持つべき」と主張する。
(聞き手は本誌編集長、遠山 敏之)

食品添加物や残留農薬は危なくないのですか?

──食の安心・安全を巡る事件が次々に起きています。食品添加物や残留農薬の心配もあります。リスク管理の視点ではどう考えればいいのですか?

西島 発生する確率が高く、人体への影響が大きいという視点からすると、微生物による汚染、いわゆる食中毒が一番危ないものです。年に何万人もの患者が出ています。数年前からノロウイルスが冬期に大発生していますが、ここ2年ほどは、鶏肉や牛肉を原因とするカンピロバクターによる食中毒が最も多く発生しています。

──生食(なましょく)をやめるよう指導する自治体も出ていますね。

西島 それに比べると、食品添加物や残留農薬のリスクはとても小さいと思いますね。しかし、消費者にはそれがねじ曲がって伝わっている。特に食品添加物に関してはひどい。「身体に悪い」という先入観ができあがっている。

もともと食品添加物は、食生活とは切っても切れないものです。例えば、「にがり」は、塩化マグネシウムなどが主成分ですが、豆腐製造にはなくてはならない。中華麺に独特のこしや香りを加える「かんすい」もそうです。「昔は食品添加物なんてなかった」という意見をよく聞きますが、それは誤解です。人間は昔から食品をより美味しく、より保存がきくように食品添加物をうまく利用してきました。

それが、食の安心・安全に対する漠然とした不安感が高まっていることをきっかけに、商売にする人が出てきました。「食品添加物は危ない」と主張する自称「食品評論家」という人達です。人間は「大丈夫」という情報と「危ない」という情報の2つがあると、どうしても「危ない」方に関心を持ちます。だから彼らの話はウケますが、情緒的に話しているだけ。科学的裏づけはなぜかまったくない。なのに「危ない」と主張する人の方が正しいというような風潮も出ています。

報道関係の責任もあります。「危ない」という話の方が読まれますから、ことさらに大きく取り上げることが多々あります。記事も商品の一つですから仕方がない面もありますが、その結果、誤解を広げています。許可されている着色料に対して発ガン性があると言う人もいますが、それを示すデータはどこにもない。もしあったら見せてほしいと思います。私は食品添加物が好きでも嫌いでもありませんが、あまりにも非科学的なことがもっともらしく話されていて、矛盾を感じます。

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