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決断のとき・王将フードサービス社長 大東 隆行 編

2008年11月20日

王将フードサービス社長
大東 隆行(おおひがし たかゆき)

1941年大阪市生まれ。関西経理専門学校中退後、薪炭・氷販売業の経営を経て、義兄の故・加藤朝雄が67年に創業した「餃子の王将」1号店に69年入店。78年営業本部長、95年副社長を経て、2000年社長に就任。06年に大証1部上場。08年8月現在、直営332店、FC181店、計513店。ほかに、中国大連市に6店。

文=芦部 洋子
写真=水野 浩志

負債470億円、倒産寸前からの復活
「安くて早くて美味しい、に原点回帰や
大赤字でもボーナス出して踏ん張った」

2002年1月の深夜。厳寒の京都市山科。王将フードサービス社長室では、社長の大東隆行、専務、常務の3人が、机上に広げた書類を囲んで、話し合いを続けていた。年末から3人は金融機関に提出する再建計画書を作成。年が明けて提出期限が迫り、会社に泊まり込んでの作業は佳境となっていた。

「2000年に僕が会社を引き継いだときには、有利子負債額が最大470億円やもん。倒産寸前、危機的な状態やった」。90年代に行った不動産投資などの失敗が原因だった。大東は会社再建を担うべく社長に就任。02年3月期に創業35年で初めての赤字決算を出すこととなった。

「これだけ大きい負債や、うちの実力相応の現実的な長期計画やないと、銀行さんも承認してくれへん」。事態はトップシークレット。泊り込みは1週間にも及んだ。「そら辛かった」。

長年、苦楽を共にしてきた専務の鈴木は、「社長は気さくでものすごく面倒見のいい人」と話す。「店長の名前はすべて覚えていて、名前で呼びかける。問題のある店舗を早期発見して早く手を打つ。良い店を早く見つけて評価する。これを常に気にしています」

そもそも、社長はやりたくなかったのだという。「けど、僕らは創業当時から会社を支えてきた生え抜きや。並々ならぬ『王将』への愛着がある。何とかしたいと思った。商売が軌道に乗るまでの苦しみも知っとる。月に20~30店の出店ラッシュも血を吐きながら乗り越えた。そういうもんが力を合わせたら、強いわ。大好きな『王将』を建て直すんや、つぶれるはずがない、絶対つぶさへんと」。

現在、専務の鈴木和久はその3人のひとりだ。「社長は明るく話すけど、正直、地獄を見るような日々でしたよ。84億円の特別損失で29億円の赤字。会社更生法の適用を受けるかどうかの瀬戸際ですから。どうやって再建するか、方針を示して、具体的な数字を出さなければならない。1週間不眠不休で再建計画を作り上げました。少し眠ろうと思っても、会社に布団なんてない。倉庫からダンボールを持ってきて敷いて、お歳暮でいただいた毛布を身体に巻きつけて、横になったけど、寒かった」。

苦しい日々だったが、再起を確信する大東の方針は明確だった。「原点回帰です。もう一回基本に返ろう。うちがここまで成長できた理由は何や。美味しくて、安くて、早い、『餃子の王将』。この基本に戻って再出発や」。


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