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知っておきたい店情報

飲食店による旅館経営 狙いは食事・宿泊の相乗効果

柚子屋旅館 一心居(料理旅館、京都・祇園)

2005年12月2日

文=服部 貴美子
写真=太田 未来子

和のオーベルジュ

八坂神社の東隣に立地。石段を登った先に玄関

今年9月末、際コーポレーションが、そんなユニークなコンセプトで京都の経営難に陥っていた旅館を引き継ぎ、「柚子屋旅館 一心居」を開業した。

オーベルジュとは、宿泊できるレストランを意味するフランス語で、料理自慢の宿泊施設を意味する。

多数の旅館が存在する京都で、あえて新規参入する際コーポレーションの見立ては、以下のようなものだ。

観光地・京都の旅館は、団体客の宿泊利用で収益を保てるため、食事への工夫が不足している。その結果として、京料理を満喫したいという観光客の間では、夕食をつけない宿泊が好まれる傾向にある。しかし、食事を宿で取りたいという潜在的なニーズは高い。料理に力を入れれば、差別化できると判断した。


ディナー時は、鍋ものや「竈炊き御飯」を組み込んだコース(8000円~、3種類)が売れ筋。写真は一例で、7種類の京野菜を、柚子味噌・鯛味噌・金山時味噌で食べる前菜と、柚子鯛鍋

料理は、だしのとり方など京料理の基本は守りながらアレンジした創作料理。普通の料理店として、宿泊客以外にも食事を提供する。

生産農家との直接交渉により入手した京都・水尾の柚子や京野菜を使った鍋料理、京都牛の棒寿司などが自慢。料理の脇役だった柚子は、麺に練り込んだり、雑炊のだしに合わせたり、そのまま天ぷらにして甘みを引き出している。農家から直接仕入れる京野菜は、本来の風味を楽しませるため、あえて生で提供するなど工夫をこらしている。

旅館の内装を手掛けたグループ会社、ファーストキワ・プランニングの慈道由美子氏は「30歳代以上の本物志向のお客様をメインターゲットに、懐かしさとくつろぎ感を提供したい」と、語る。

内装のコンセプトは「山寺」。中庭には何カ月も前から準備した山の木を植え、華やかな祇園の町並みとは対象的な「侘び寂び」を演出している。上がり座敷に膳が配された食卓は、中高年層にとって、どこかノスタルジックな空間だ。季節ごとに、柚子や薬草、菖蒲などを風呂場に供えるなど、ホスピタリティーにも力を入れている。

今後、地元客が遠方の友人達のために宿を予約して、夕食を一緒に取る。あるいは、別々の宿に泊まったグループ客が、食事のために柚子屋旅館に集まるといった利用の増加を期待している。営業の主体は料理部門で、まさに泊まれる料理屋としての強みを活かす戦略だ。

料理・宿泊部門を合わせた2006年10月までの目標年商は2億5000万円。関東地方からの観光客や外国人観光客の評判も上々という。

客席数は70席。宿と食事は別と考えがちな観光客の取り込みを狙い、こだわりの料理を出す

おくどさん(竈)が帳場の前 に鎮座。骨董の調度品ともあいま って、懐かしい日本の風景を思い 出させてくれる


店舗DATA

京都市東山区祇園町八坂神社南隣545
TEL:075-533-6374
2005年9月28日開業
店舗面積/ 45坪(148.5平方メートル)●席数/ 70席(別途客室が9室)●営業/ 11:30~14:00、17:00~21:00*、無休●客単価/朝2000円、昼2000円~、夜5000円~(宿泊は、別途)●初期投資額/約7000万円●月商/ 1000万円(目標)*●経営/際コーポレーション●設計/ファーストキワ・プランニング(TEL:03-5453-2992)●施工/日商インターライフ(TEL:03-3810-7111) *は飲食部門のみ


※この記事の情報は、2005年12月現在のものです。変更されている可能性がありますのでご注意ください。