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知っておきたい店情報

鈴政

昼からにぎり寿司を食べたい人の店

2006年2月10日

文=大谷 珠代
写真=尾苗 清

「鈴政」の最大の特徴は、テーブル席でも、ランチでも必ず握りたてを提供すること。木皿に1種類ずつ人数分を盛るのが基本だが、2人客の場合は「寿司がなくなると場がもたない可能性もあるので」(2代目の佐藤英俊氏)、2種類ずつ盛って提供する。1カンずつの提供は、盛り合わせに比べ追加注文する人が多いのも大きな利点

山形県北西部にある人口11万8000人の酒田市。地名は知られているが、繁華街の空洞化や人口減少など地方共通の問題を抱えるこの地で、5年以上売り上げを伸ばし続けている店がある。「寿司割烹 鈴政」だ。

創業は1956年。2000年に8000万円かけて行った増改築で現在の130坪(429平方メートル)の店になったが、改築後だけをみても、年商は2000年の約1億円から、2004年は1億2800万円と4年間で28%もアップ。2005年は1億3000万円を上回る見込みだ。

1階にはカウンターとテーブル席、2階には大小の宴会場や個室があり、家族客や接待、法事、宴会客など客層は様々。仙台や秋田からのリピーターや観光バスのツアー客も多く、週末ともなると、昼だけで多い時で100人、平均50~60人が来店する。11時半の開店直後に満席になるのはザラ。「並ぶ人に申し訳ないので、観光シーズンの4~11月は土日の昼の予約を取らない」(2代目の佐藤英俊氏)ほどだ。

5年連続売り上げ増
安売りせず、夜も早じまい

5年前に増改築した店は130坪の大箱だが、1階はカウンター9席、テーブル3卓とかなりゆったりした造り(左)。増改築中に店を休んでお客に忘れられたりしないよう、宴会の少ない時期に2 階の宴会場を作るなど、営業を続けながら工事を行った。正面玄関とは別に宴会場に通じる専用入り口もあり、知り合いと出くわしたくないお客に重宝されている

「鈴政」がある日吉町は、かつて花町として栄えた、料亭や小料理屋の多いエリア。父・政太郎氏は、この町で数十年にわたって夜を中心に営業していた。80~90年代初頭の年商は9000万円前後。それが、年商1億円を超えるまでになったのは、英俊氏の提案で昼の営業を強化したことが大きい。

現在の店を引っ張る2 代目の佐藤英俊氏。休日に従業員を研修会に連れて行くなど若手の教育にも熱心

深夜まで営業していた時は、ビールとお通しだけで何時間も居座る酔っ払い客も少なくなかった。「そんなお客の相手はしたくない。昼に力を入れて夜は早く終えた方が若い職人にとってもいい」と英俊氏は考え、1990年頃から昼にも営業していることをアピールし始めた。そして、約5年かけて昼の売り上げが伸び始めた95年頃、「店の人気が爆発的に上がった」(英俊氏)。

成功のカギは、昼を強化した時から徹底している「まずいものは出さない」というこだわり。そして、95年頃から始めた独自の寿司提供法だ。

飲食店の中には、使い切れなかった食材を翌日のランチに使い、椀物や小鉢などが付いたお値打ちランチとして提供するところが多いが、「鈴政」にはいわゆるランチメニューはない。

「生ものは1日経つと味が落ちるし、沢山オマケを付けても滞在時間が延びるだけで、お客様にも『旨い寿司を食べた』とは思ってもらえない。ただ来てもらうだけでなく、『旨い寿司なら鈴政』という循環を作ることこそ大切」(英俊氏)。そう考え、昼間も、夜と同じ寿司メニューを提供している。


白身魚をはじめネタの8割は地物。売れ残った分はまかないに使ったり、従業員に分けるなどし、生で提供するものはその日仕入れたものだけを使う。肝醤油をかけたカワハギや塩で食べさせるヒラメの握りなど、お客を喜ばせる変わり寿司も盛り込み、昼の本格寿司需要を獲得している。

店舗DATA

山形県酒田市日吉町1丁目6-18
TEL:0234-22-2872
1956年開業●店舗面積/130坪(429平方メートル)●坪月商/約8万円●営業/9:00~22:00(L.O.)、日祭9:00~20:00(L.O.)、月2回休●席数/1階23席(カウンター9席、テーブル3卓)、2階に宴会場(45人)、中広間(14人)、4~6人用個室3部屋有り●客単価/約3000円(見込み)●一日の客数/50~60人(見込み)●月商/約1080万円●原価率/44%●経営/佐藤 政太郎


※この記事の情報は、2006年1月現在のものです。変更されている可能性がありますのでご注意ください。