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知っておきたい店情報

家族客歓迎! 個室主体の店

和風ご馳走屋 てっぺん(居酒屋、長崎県西彼杵郡時津町)

2006年5月12日

文=芦部 洋子
写真=菅 敏一

個室の引き戸は、上下の格子を透かしてある。空いた器が置かれたり、飲み物などをこぼした際、外から見てすぐに対応できるように、という工夫だ

大村湾、南を長崎市に接する人口約2万9000人の小さな町。この町のロードサイドに「和風ご馳走屋 てっぺん」がある。客足が遠のいた古い割烹料理店をリニューアルし、遠方からもリピーターが絶えない居酒屋として蘇った店だ。

割烹料理店の頃は月商300万円に届かなかった。だが、2004年7月のリニューアルオープン以降、売り上げは右肩上がりに伸び続け、今の月商はかつての約3倍、900万円近くに達する。

客層はカップルから家族連れ、グループ客、団体客と多彩。週末は予約客だけで満席になる。町内や長崎市はもとより、車で片道1時間の大村市、2時間かかる佐世保市から通う熱心なファンも多い。

常連客に、この店に通う理由を聞いてみた。

「個室でくつろげるのがうれしい。赤ん坊が泣き出しても気を使わずにすむから、安心して食事を楽しめる」。こう話すのは、乳幼児を連れて月に数回は足を運ぶという家族客。

長崎市内に勤務する職場仲間のグループは、店の活気が好きだという。「とにかくスタッフが元気一杯で気持ちがいい。明るくて楽しい店だから、ここでの宴会はいつも盛り上がるよ」。


個室のくつろぎと元気な接客で生まれ変わる

赤ちゃん連れのお客も周囲を気にせずに楽しめる。早い時間帯は子供連れが半数以上を占めることも。安心してくつろげるためか、女性のグループ客も多い

「てっぺん」の強さの1つは接客のレベルの高さにある。それは閉鎖された空間である個室でも変わらない。

「個室の接客は、入り口の扉を開ける瞬間が勝負。瞬時に室内の雰囲気を読み、静かに過ごしたいお客さんには適度な距離を保つ。ノリの良いお客さんには、どんどん話しかけて気分を盛り上げていく。スタッフにはそう指導しています」(今村社長)。

その言葉通り、スタッフの動きはテキパキとして気持ちがいい。個室で呼び鈴が鳴った途端に駆けつけ、オーダーを聞いて、空いた器を下げ、灰皿を取り換え、空調の具合を直し、さらにポケットからオモチャを出して子供をあやす。「1way3job」(料理を運んだり、水を注ぐなど、客席に行く機会があったら1度に3つの仕事をするべきという基本)どころか、1度に4つも5つも仕事をこなしていく。

店内には、スタッフの元気なあいさつとコールの声が常に飛び交う。お客の「これ、美味しいね」の声に、「“美味しい”頂きましたぁ!」と応じ、ホールスタッフ全員で「ア~、てっぺん!」とお礼のポーズを決める。お客も面白がってこのポーズをまねて、場に笑いの渦が......。

こうした接客が、幅広い年齢層のお客に支持されている。「気持ちの良い時間を過ごせた」というお客から、びっくりするほど多額のチップをもらうこともある。感謝の言葉をかけられたり、お礼の手紙が届いたり......それがまた、スタッフのやりがいにつながる。


朝礼、キャンペーン、報奨金教育も楽しいイベント

「最高のおもてなしをするための朝礼」。お客を迎える前に気持ちを引き締め、腹から声を出してテンションを上げ、あいさつを訓練し、サービスの心得を確認し合う。最後は「お客様に明日への元気を与えるために!」の言葉で締めくくる

今村社長はスタッフのやる気を引き出すことに余念がない。

最も力を入れているのが、毎日営業時間の15分前に行う「朝礼」だ。改装当初は、その日の連絡事項を伝えるだけの簡単なものだった。しかし、「日経レストラン」連載の「超元気スタッフ続々育成術!」を読んで朝礼の意義を再確認し、DVD「本気の朝礼」(日経BP社)を参考に、朝礼の内容を大きく変えた。

「朝礼の目的は、スタッフの意識を高め、全員の心を1つにすること。お客さんに最高のおもてなしを提供するための、原動力になるような朝礼を目指してます」と今村社長。

10代のアルバイトから50代のパートの主婦まで、全員が姿勢を正し、腹から声を出し、共に気持ちを盛り上げていく。内容は各自の月間目標の達成状況の発表、自分の目指す姿を宣言する「ナンバーワン宣言」、仕事の心得を確認し合う「凡時徹底事項」、あいさつの訓練などだ。

導入当初は、ハイ・テンションの朝礼が果たして受け入れられるか不安だった。だが、19歳のアルバイト丸本克明君は「ミーティングでDVDを観た時、その朝礼の真剣さに感動して鳥肌が立ちました。泣いていたパートさんもいた」と言う。彼ら若いスタッフが率先して声を出して盛り上げると、年配のスタッフもノッてきた。

「朝礼を変えてから、みんなの目つきが変わった。以前はお客の少ない時間帯にダレることもあったが、今は緊張感が持続している。朝礼で各自の目標を発表するので、気付いた点は注意し合っているようです」(今村社長)。

取り組みは朝礼だけに終わらない。やる気と実力によって時給が上がる能力給制度もそうだ。

今村社長は毎月、パート・アルバイト1人ひとりについて、どのレベルの仕事までできているかをチェックする。採点基時給決、月々の給与を算出する。しかも、給与は必ず、今村社長が一言添えて手渡す。「頑張ったな」「また来月、頼むぞ」。これがスタッフの大きな励みになる。

ユニークな名前の料理は、お客との会話のきっかけに。左上から時計回りに「大根タワーの肉味噌あんかけてっぺんスタイル」(580円)、「たぶん世界一大きい車エビの塩焼き」(2000円)、「鹿児島豚軟骨の5時間半煮込み」(580円)、「アラの刺身」(800円)。車海老を目当てに毎月大阪から通う家族連れもいる

以前は今村社長が1人で考えていたメニューも、スタッフから提案してもらうことにした。パート・アルバイトは自由参加としたが、ふたを開けると厨房スタッフ全員が新メニューを考え、中には8品も提案した強者もいた。このコンテストで上位に入った作品は今、店の人気メニューになっている。

従業員のやる気を喚起する一方で、おカネだけに汲々とすることがないように、心配りも怠らない。能力評価には、経営者だけでなく、本人の自己評価を加えたり、毎月の給与明細には各自の長所、短所を記して激励する。

経営者の意欲的な取り組みと、それを支えるスタッフ。「うちの店の一番の売りは“人”」と語る今村社長は、早くも長崎市内への2号店出店を準備中だ。


店舗DATA

長崎県西彼杵郡時津町左底郷35-4
TEL:095-882-2341
2004年7月開店●経営/いまむら


※この記事の情報は、2006年3月現在のものです。変更されている可能性がありますのでご注意ください。