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知っておきたい店情報

「同じ料理は出さない」懐石料理店

「天ぷら 松」(懐石料理店、京都市)

2007年9月21日

文=宇山 恵子
写真=田中 仁

氷の器に入れたそうめん。右から、酢の酸味を利かせた「夏野菜」、鰹と昆布だしの「山芋とわさび」、柑橘系のつゆで楽しむ「じゅんさい入り」(器はバカラ製)。いずれもコースの1品

今、京都の食通たちに評判の店が、嵐山・桂川のほとりに佇む「天ぷら 松」。常連客が80%を占め、一度来店した客はほとんどリピーターになる。

お目当ては、店主、松野俊一さんの創意工夫に溢れた創作料理の数々。それも、「同じ料理は二度と出さない」という姿勢が、リピーターの心をつかんでいる大きな理由だ。

夏の名物はそうめん。大きな氷を削った器を用意して、お客の好みに合わせたつゆで提供する。さっぱりした味が好きなお客には、ユズとスダチの香りがさわやかな柑橘系のつゆ。お客が疲れ気味と見れば、酢を多めにしたつゆ。落ち着いた味が好みの客には、鰹だし、といった具合。


珍しい海ウナギの料理は、右から「酒蒸し」「すき焼き」「白焼き」

また、汽水湖(淡水と海水が混ざった湖)や河口付近でしか獲れない、幻の海ウナギも。皮が薄くて身が厚く、脂ののりもいい、夏の珍味だ。これを白焼き、すき焼き、酒蒸しなどにして、北大路魯山人や京都・東山の陶芸家、河井寛次郎氏の器などに盛り付ける。

基本的にコースでの提供で、突き出しからお造り、汁物、天ぷら……と、8~10品の構成。価格は昼3500円~、夜8500円~で、内容に比べてお手ごろとあって、人気は高まる一方だ。

開業当時は天ぷら定食のみだったが、常連客に喜ばれるようにと裏メニューの一品料理などを出しているうちに懐石料理に比重が移ってきて、7~8年後にはコース料理のみを出すようになった。


(左)懐石料理が人気だが、開業当時からの「天ぷら」の看板にこだわる。四季折々の旬の味をさらりと揚げた天ぷらも根強く愛されている
(右)お客の反応を間近で見ながら調理できるカウンター。セットされた盆の前にあるのは、有数の竹の産地、嵯峨野の竹を割って作った台。揚げたての天ぷらを載せてお客に出す。オープン以来使い続けているものだ

あしらいに使う緑の葉は、近くの桂川に摘みに行く。そうすることで、季節感と地元色を出すのだという。

対応にも心配りが行き渡る。初来店のお客にはカウンター席を勧め、好みや食べる速さを見ながら、料理を微調整する。

何度行っても新しい感動と喜びが味わえる「期待を裏切らない店」なのだ。


店舗DATA

京都市右京区梅津大縄場町21-26
TEL:075-881-9190
1974年4月開業●店舗面積/35坪(115.5m2)●席数/54席(うちカウンター12席)●営業時間/11:30~21:00(L.0.)、水休●客単価/昼4000円、夜1万円●1日来店客数/60~80人●月商/約900万円●原価率/約50%●スタッフ数/11人●経営/松野千よこ(個人)


※この記事の情報は、2007年8月現在のものです。変更されている可能性がありますのでご注意ください。