
子どもがキレるのは、食品添加物のせい?
多動性の食品添加物原因説に科学的な否定下る
「最近の子どもがキレやすいのは、食品添加物のせいである」との風評を耳にするようになってきた。食品添加物は食品衛生法に従い、科学的な健康影響評価において安全性が確認され、使用基準も厳格に決められているにもかかわらずだ。健康影響評価は、がんの発症や奇形が発生しないかといった世界標準の毒性試験で評価しているが、子どもがキレるかどうかの試験項目がないからだろうか。
そんな折、昨年9月に世界的な権威のある医学雑誌「ランセット」に、食用色素(着色料)と安息香酸ナトリウム(保存料)を入れたジュースを子どもに与えて行動を観察する行動心理学の実験で、多動性(落ち着きがない)との関係を示唆する論文が掲載された。これを世界中のアンチ食品添加物派が注目し、「やっぱりそうだった」と彼らの信念を深めるところとなった。
ところが今年3月、今度は欧州食品安全機関(EFSA)が先の実験論文について再評価したところ、「これまで安全だとされていたことを覆す科学的根拠はない」と発表したのだった。
興味深いのは、実験で子どもの行動を観察した母親が、食品添加物ではないプラセボという物質を飲んだ子どもの行動に対しても、多動ではないかと評価を下した点だ。つまり、「悪いものかもしれない」とわが子を心配する母親の評価眼は、悪い方へブレるということ。行動心理学的には面白いが、食品添加物が多動に起因しているとはいえないという結果だった。
「危ない」というネガティブ情報に比べて、「実は危なくなかった」というリスクを打ち消す情報は、地味で目立たない。しかし、こうした正しい情報を積極的に収集することが、意味のない不安に陥ることを防ぐ術なのである。
文=中野 栄子 (「Food・Science」)
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