本当のコーヒーの価格を知っていますか?

映画『おいしいコーヒーの真実』が描く生産者の現実

2008年6月18日

今、目の前に1杯330円のコーヒーがあるとする。そのうちコーヒー農家がコーヒー豆の代金として手にする金額が3~9円(※)だと聞いたら、多くの人は驚くに違いない。どうしてそんなに安いのか、では残りの金額は一体どこへ? そもそもコーヒー豆の価格はいつ、誰が、どこで、どのように決めているのだろうか――。

そんな疑問に答えてくれるドキュメンタリー映画『おいしいコーヒーの真実』が、東京・渋谷のアップリンクXなどで現在公開中だ。本作はどんな飲食店でもメニューに載っており、コーヒー好きの人々はほぼ毎日飲んでいるのに、一般の消費者だけでなく飲食店の関係者であっても意外と知らないであろうコーヒーを取り巻く世界の現実を教えてくれる。

詳しくは映画を見てもらうしかないのが、コーヒー豆は生産農家から消費者に届くまで、非常に複雑なルートをたどる。そしてコーヒーの価格は、ニューヨークとロンドンの商品取引所において、農家の取り分にはまったく関係なく決められるため、生産現場は貧窮にあえいでいるという事実が明らかにされる。映画はコーヒー発祥の地であるエチオピア連邦民主共和国の農民たちが貧窮にあえぐ現状を映し出す。「これでは子供を学校に行かせることもできない」と嘆く家族。「コーヒーは儲からないから、チャット(ヨーロッパの多くや米国では違法薬物に指定される植物)の生産に切り替える」という青年。大手コーヒーチェーンに豆を提供している地区では飢餓が発生し、子供たちが栄養失調に苦しんでいる。

こうした状況を打破するため、複雑な流通ルートを簡略化し、農民が適切な価格で直接焙煎業者にコーヒー豆を売れるようにと奮闘するのが同国オロミア州のコーヒー農協連合会代表タデッセ・メスケラ氏だ。映画では触れられてはいないが、メスケラ氏のこのような活動の原点は、日本の農協で氏が受けた2カ月間の共同運営の研修に始まる。ここで中間業者や輸入業者に支払われている多額の金を、農業者が受け取ることができる協同組合というシステムの存在に深い感銘を受け、それを実現すべく、1999年故郷のエチオピアにコーヒー農協連合会を設立したのだ。

アップリンクでは、週末は20代、30代の若い観客を集めて満席が続き、急遽レイトショー上映も決定したほどの盛況で、配給元はうれしい悲鳴を上げている。多くの観客は本作を観て、「このような現実を今まで全く知らなかった」と衝撃を受けているそうだ。どんな飲食店でもメニューに載っているコーヒーの知られざる真実。本作は2006年製作なのでコーヒー価格については現在の状況とは異なる部分もあるが、それでも映画を観た後では1杯のコーヒーの味が変わってしまう人もいるかもしれない。

※この数字はイギリス版の映画のオフィシャルサイトからの転載で、英国内のコーヒーチェーンを対象に調査されたもの。コーヒーの価格変動は激しく、コーヒーの生産国、品質、銘柄、消費国、喫茶店やコーヒーの種類によって、価格は大きく変わる。

■「おいしいコーヒーの真実」予告編、オフィシャルサイト

監督・製作:マーク・フランシス、ニック・フランシス 2006年イギリス、アメリカ・78分 配給:アップリンク

※本作は学校や公共機関の自主上映のためにプリントの貸し出しにも対応する。料金など詳細はオフィシャルサイトの「自主上映のご案内」の項目を参照のこと。

(吹田 恵子)

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