有機農業の現場を知る!

山形県高畠町の30年を追った映画が上映中

2008年7月7日

6月下旬より東京・ポレポレ東中野で公開されている映画『いのち耕す人々』は、私たちの命を支える食べ物をつくることに誇りを持ち、美味しい作物を育ててきた山形県高畠町の農家の人たちの30年の歩みを伝える貴重な作品だ。

米、野菜、ぶどうやラ・フランスなどの果物、畜産がバランスよく営まれる複合経営農業を特色とする山形県高畠町は、日本における有機農業のさきがけとなった土地。過去には、有吉佐和子が『複合汚染』を執筆するにあたって取材に訪れ、高畑勲監督の映画『おもひでぽろぽろ』のモデルにもなった。また近年は、上和田有機米生産組合の遠藤五一さんが作った完全無農薬米コシヒカリが『全国 米・食味分析鑑定コンクール』において2004年から4年連続で金賞に輝いたことでも脚光を浴びている。

リーダーの星寛治さんが仲間とともに38人で「高畠町有機農業研究会」を立ち上げたのが1973年。それ以来、完全無農薬の食べ物づくりに命を張って取り組んできた。有機農業は雑草や虫との闘いであり、農薬に頼らない作物づくりがなかなか広まらない理由の一つに雑草取りの重労働があるという。雑草を取り除くには、水田に入り腰を曲げて手で泥をかきまわしながら抜くしかない。リンゴ農園ではリンゴの実一つひとつに袋をかぶせる作業が続く。「手間ひまかけることでしか安全な食べ物は作れない」という映画の言葉は重い。

高畠町の取り組みは、既存の米の流通ルートに頼らずに、消費者と生産者との直販ルートを確立したという点でも画期的だった。また、地元の小学生や修学旅行生に田植えや野菜の収穫をさせたり、「まほろばの里農学校」を定期的に開催し、都会から農業体験にやってくる人々を受け入れる啓蒙活動にも力を入れている。今では毎年100人近くの若者や市民が訪ねてきて、田植えや収穫を手伝っているそうだ。こういった取り組みが着実に根を張り、現地に移り住んで農業を始める人も増えている。

有機農業を始めたとき「最初は変わり者扱いされた」と星さんは語る。しかし30年前は約2000戸中38人しかいなかった賛同者が徐々に増え、現在では半数にあたる約1000戸が減農薬や無農薬での作物づくりを行っているという。30年の間には筆舌に尽くしがたい苦難を乗り越えてきたことは、映画の中で紹介される星さんの魂の叫びのような詩が何より物語っている。生産の現場での「手間ひま」を知らずして安心な食べ物を! と軽々しくは語れないのだということを痛感させてくれる作品だ。

本作は東京での公開後、大阪での上映も決定している。また上映会のためのDVDの貸し出しも行っている。詳細はオフィシャルサイトを参照のこと。

映画『いのち耕す人々』は6月28日よりポレポレ東中野にて上映中(午前10:25~のみ)http://www.sakuraeiga.com/inochi.html

ポレポレ東中野http://www.mmjp.or.jp/pole2/

※各回先着2名に高畠有機米のプレゼントあり

農業体験がしたいと都会からやってくる若者たち、ひたすら腰を曲げて泥まみれになりながら田植えに挑戦する

高畠町有機農業のリーダー星寛治さん、右手に持つのは14年間無農薬有機栽培を続けた田んぼで作った稲、左手に持つのが化学肥料や除草剤を使った稲、根の太さの違いが一目瞭然だ。

季節はずれの雹(ひょう)で傷がついたリンゴを消費者に見せて事情を説明する、高畠有機農業推進協議会会長(映画製作年2006年当時)中川信行さん

(吹田 恵子)

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