
営業停止が増加するカンピロバクター食中毒
予防3原則「つけない、増やさない、殺す」は通用せず?
カンピロバクター菌による食中毒が増えている。お笑い芸人が経営する焼き肉店や結婚披露宴会場を展開する上場企業など、カンピロバクター食中毒発生による営業停止のニュースを、このところよく目にする。カンピロバクター食中毒の多くは、肉の生食や肉の加熱不足によるもので、動物の消化管に広く存在するカンピロバクター菌が原因だ。原因食を扱った調理器具が起こす2次感染も見逃せない。
カンピロバクター食中毒は、潜伏期間が2~5日と長いことが特徴だ。故郷の結婚披露宴に出席した人が、そこで食べた料理が原因でカンピロバクター食中毒になっても、実際に発症するのは都会に戻った後が多い。医師の診断を受けても複数名の症状が同時に確認されないことから、これまでは単なる食当たりとされることもあった。
この食中毒が増えた背景には、焼き肉店などで鶏刺しや生の牛レバーなどの人気が高まっていることがあるだろう。カンピロバクター菌は市販の生の鶏の30~80%から検出されるほど汚染率は高い。しかも、ほかの食中毒菌と違い、菌数が少なくても発症する。鶏肉を仕入れてからどんなに衛生管理を徹底しても、当初に菌が混入した鶏を生で提供すれば、発症の確率は高いまま。ましてや、抵抗力の低い高齢者や子供の発症リスクはなおさらだ。
従来食中毒に対しては、「菌を付けない、増やさない、殺す」という予防3原則が大切とされていたが、カンピロバクターのように増えなくても食中毒が発症する菌には、「増やさない」が通用しなくなったわけだ。カンピロバクター菌は、60℃1分間の加熱以外で死滅させる方法はないことを考えると、飲食店は鶏刺しの提供に、十分過ぎるくらい慎重であってほほしい。 (この記事は『日経レストラン』2008年9月号に掲載されたコラム「食の安心安全」を再掲載したものです)。
文=中野 栄子 (「Food・Science」)
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