日経レストラン ONLINE
11月20日(金)19時00分 更新
記事検索
PR

神奈川県「受動喫煙防止条例」の波紋◆ゼットン・稲本社長に聞く

2008年10月14日

9月半ば、神奈川県が検討している「禁煙条例」が「受動喫煙防止条例(仮称)」と改名され、飲食店やホテルなどでは「分煙」を選択できることになった。しかし、この「分煙」の条件はかなり厳しく、改装などの設備投資が必要になるため、実際に分煙を選択するにはハードルが高い。この条例案について、ゼットンの稲本健一社長に意見を聞いた。

「個人経営のお店が受けるダメージは相当大きい」と指摘するゼットンの稲本健一社長

――「全面禁煙」から「条件付の分煙が選択できる」と変わりましたが。

何だか迷走している感じですね。行政サイドが、もっともっと飲食店の現状や、お客様の様子などをしっかりリサーチして、この条例が社会に与える影響を複眼的にシミュレーションしてほしいですよね。

というのも、「分煙にしようと思っても、今の店構えでは大がかりな改装が必要になる」という店が多いと思います。そうなると、工事費、人件費、工事期間中の休業による売り上げ減など、負担が膨大になります。資金力のある大きな会社の店舗なら大丈夫かもしれませんが、どこの駅前にもあるような、地域の人々に愛されている小さな小料理屋、焼き鳥屋、スナックなど、個人経営のお店が受けるダメージは相当大きいですよ。

そもそも、この「分煙」の内容も、今ひとつ分からないところがあります。例えば、禁煙席と喫煙席の割合については何も書いてない。それなら、極端なことを言えば、「1席だけ小さく仕切った禁煙席を作って、あとは喫煙席」とすればいいということにもなる。これなら、小さな店でも実現可能かもしれません。でも、それに意味があるのでしょうか。

僕自身は、タバコは一切吸いません。寿司屋のカウンターで隣の人がタバコを吸うと、店の人に席を替えてもらったりするくらいです。ただ、僕は、街の人が集まるコミュニティーみたいな小さな店が大好きで、よく飲みに行ったりもしますから、そういう味のある店がダメージを受けないように、行政側がサポートしてなくてはいけないと思います。すでに急速な勢いで景気が落ち込んで、ただでさえ飲食店の経営は相当厳しい状況です。そんな最中に、売り上げアップに貢献しそうにない改装費を自己負担しろ、というのは酷です。そんな余裕はありませんよ。

――今回の条例が通ったら、稲本社長の店舗にも影響が出ますか?

うちの会社がプロデュースした店は、客単価の高い(食事中心の)レストランなどは禁煙で、バーやテラス席は喫煙可にしてあります。9月にオープンした横浜駅西口の「A&P with terrace」という店も、ビルの屋上にあるテラス席を喫煙、屋内を禁煙にしました。テラス席は問題ないでしょうが、バーをどうするか。さっきの話ではないですが、1席だけ禁煙席を作りましょうかね(笑)。

タバコにも、文化があります。例えば、横浜を訪れたタバコ好きの人が、海を臨む立地で夜景がきれいなジャズバーなどに行けば、お酒を飲みながらシガーでも吸いたいでしょう。タバコが必要な店もあるのです。そうした背景を全く無視して、一律に条例で網をかけるというのは、現状を知らなさ過ぎです。

――具体的に「こうすれば」と思う解決策はありますか?

店の入り口に「全面禁煙の店」「分煙の店」それと「全面喫煙の店(タバコが吸える店)」という表示をして、お客さんが入店前に選べるようにすればいいのではないでしょうか。タバコ嫌いな人がわざわざ「全面喫煙」の店には入らないでしょう。仰々しい看板ではなく、オシャレでデザイン性の高い看板やステッカーなどを作って、それを行政が店に配布し、その添付を義務付ける、というのが一番現実的な方法だと思います。

飲食店って、もちろんパブリックなスペースでもありますが、お客さんが店を選ぶ自由はなるべく狭めないでほしいですね。すべて一律に禁煙にしてしまうという考え方は、現実的ではないような気がします。

(宇山 恵子)

最新お薦め記事一覧
バックナンバー