
青森・八戸のレストランが「サポート予約」の取り組みを開始
東日本大震災による飲食店への被害は計り知れない。長引く不況の中、じり貧で生き抜いてきたのに…と嘆く店も多いだろう。しかし「いつまでも気持ちを萎えさせていてはいけない」と、地域振興と自店の存続へ向け青森県八戸市にあるレストラン「オステリア・デル・ボルゴ(以下ボルゴ)」が動き出した。その取り組みがユニークなので紹介する。
新幹線八戸駅から徒歩15分のところに位置する「オステリア・デル・ボルゴ」は、オーナーシェフである滝沢英哲氏が県内の生産者に出向き食材を集める地産地消レストラン。食材の持ち味を余すことなく生かす滝沢氏の味に惚れたお客が全国から足を運ぶ人気店だ。
震災後、同店が始めたのは、お客に料金前払いでランチを予約してもらい、代金の半分で地元生産者に無償で食事会を開く前金制の予約だ。現時点ではこの予約について名称は確定していないので本記事では仮に「サポート予約」と呼称する。
サポート予約の仕組みはこうだ。予約金額は一人当たり5000円。これでボルゴの2500円ランチを利用できる権利を得る。残り半分は滝沢氏に託し、八戸の復興や地域振興に力を貸す生産者、医療従事者などへ提供する無償食事会の予算に充てる。
八戸周辺では流通がストップしたために、出荷できない食材が多くあり、泣く泣く捨てる生産者もいる。滝沢氏はこの予算で、地元の生産者から食材を買い上げ、それを使って無料の食事会を開き、地域振興に力を貸す人々を食事で元気づける。1回の食事会の規模は20人から50人程度を考えており、既に3月20日までに20人の食事会を2回ほど開いている。
ランチの利用は無期限で、「八戸が復旧してからゆっくり利用しに来てほしい」と滝沢シェフは語る。この前金予約は震災でお客が途切れたボルゴと地域復興に力を貸す人たちを励ます前金予約なのだ。
サポート予約のきっかけは、滝沢氏の無償食事会に始まる。今回の震災で自店にも少なからず被害があったが、地域の人たちに何かしたいと、震災直後に食事の無償提供を始めた。当初は自店でストックした食材を使い、カレーなどを日ごろ付き合いのある生産者などに提供した。食事をした人からは「気持ちが落ち込んでいたが、元気が出た」などと感謝され、直接震災に遭っていない人にも元気づけるきっかけは必要だと感じた。
「被災した方々に何かしたい気持ちはあるが、量や費用を考えると個人で手を出せるレベルではない。八戸は他の被災地に比べて人的被害は少ないが、漁船が津波の被害を受けるなど収入面で問題を抱える生産者が多い。震災不況で消費が停滞し商店などもこれまで以上に苦境に立たされるだろう。八戸を一日も早く復興させるには、お金を回して経済を活発にすることが大切。この前金予約はボランティアではなく震災不況を地域の人と一緒に乗り切る手段です」と滝沢氏は言う。
しかし約15坪のレストランオーナーにできることは限られていると限界を感じていた。そんな折、インターネット関連のコンサルティング会社デジタルメディア研究所が滝沢氏の取り組みを聞きつけ、予約の仕組みを提案し、ホームページやtwitterで予約の告知を始めた。
3月14日に告知を始めたところ、3月20日時点で250件(125万円)の予約が集まった。
「前金予約で集めたお金で提供する料理は命をつなぐための食事ではなく、落ち込んだ生産者に笑顔を取り戻してもらうためのおいしい食事。日ごろ地域の生産者により成り立っているボルゴだからこそ、取り組まなければならない。予約してくれる方々は、“生産者あってのボルゴ”ということを理解してくれている方々だ。復興後に予約してくれたみなさんと再会するということも、自分を奮い立たせる材料になっている」と滝沢氏。
この予約について「八戸は大きな被害もないのに、募金のようなことをするのはおかしい。おまえのやっていることは義援金詐欺だ」と電話で匿名の抗議もいくつかあったという。しかし滝沢氏は「サポート予約の活動については、ホームページとtwitterで逐次報告するので問題はない。生産した野菜や漁で収穫した魚が出荷できないなど、八戸の生産者は目に見えない被害に苦しんでいる。それを元気づけるのも一つの支援策だ」と語る。
ネットに告知してから数日で、全国に散らばるファンから100万円を超える予算を集めてしまったボルゴの“魅力”にはただ驚くばかりだ。金融機関や公的資金をあてにしていたらこうはいかないだろう。ボルゴにはネットでその取り組みを知った多くのメディアから取材の申し込みが殺到しているという。
今後、賛同者はさらに増えそうだ。被災して来週、来月の予定も立たないという飲食店も多いはずだ。twitterやホームページなどを積極的に活用している店なら、こういった事前予約に挑戦してみるのも一案だ。厨房設備が使えるなら自慢のメニューを通販してもいいだろう。店じまいを考える前に、知恵を絞ってサバイバル法を編み出し活路を開きたい。
(鈴木 桂水)
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