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人を育てるのはきれい事だけではない

書籍『アル・ケッチァーノ式経営術』

2014年8月11日

店の経営で避けられないのがスタッフの退社です。戦力が欠けるだけでなく、いわば家族のように過ごしてきた仲間が去った喪失感が精神的な負荷になり、悩んでいる方も多いのではないでしょうか? 私がどのようにしてスタッフを見送っているか、お話ししましょう。

いつもスタッフ一人ひとりについて成長のカリキュラムを立てて育てるのですが、思いが届かないこともあります。手塩にかけて育ててようやく責任のあるポジションを任せられる、どの店に行かせようかと思った矢先に「アル・ケッチァーノを辞めて、他の店に移りたい」と言い出す子が出てくるのです。

私の山形の店には、他店の修業で挫折した子が多くやって来ます。そんな子たちに愛情を注いで、気持ちをケアしながら少しずつ自信を持たせて、ようやく一人前に育つ姿がイメージできた――。そんなときに、「店を辞めたい」となるのですから、本当に悲しくなります。

心の中は、いろんな気持ちでいっぱいになりますが、私は引き留めもしませんし、辞める子に向かって怒ることもありません。気持ちをぐっと抑えて、その子が辞める理由を聞いて、自分にできる最善の方法を探して送り出すようにしています。

先日も、ようやく店を任せられるように育った子が「別の有名店で働きたいので辞めたい」と言い出しました。その子は覚えが悪く、ここまで育てるのに苦労しました。その思いが頭の中を駆け巡りましたが、その子が修業したいという有名店のオーナーに事情を話し、雇っていただけるようにお願いしました。普通ならそんなお願いはしづらいのですが、かといって、一時は私を助けてくれたスタッフを放っておくわけにもいかないからです。

以前は辞めるというスタッフを引き留めました。話し合いがこじれて、ケンカ別れしたスタッフもいました。このようにもめてしまうと、自分の心にも、お互いの未来にもよくない、という教訓からこうしています。

すると不思議なもので、円満に送り出すと、かなりの数のスタッフが数年で出戻りしてくるようになったのです。外の世界を知ることで、「アル・ケッチァーノ」の良さが分かり、新しい価値観が芽生えて戻ってきますから、そうしたスタッフの仕事ぶりには迷いがなく、メキメキ頭角を現します。

ただ、私は出戻りを期待して送り出しているわけではありません。「常にその子にとってベストな方法で接していると、少しだけ良いことがある」。このように感じています。

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書籍『アル・ケッチァーノ式経営術』

書籍『アル・ケッチァーノ式経営術』

奥田政行・鈴木桂水著、価格:本体1500円+税

シェフ・オーナー・プロデューサーの3役をこなす奥田氏による、自分の経験を踏まえて初めて経営論を語り明かしました。成長戦略をどう描き、どのように人材を育成し、ヒット商品を開発していくか――。