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学級委員日誌〜幸せを醸す酒造り

書籍『学校蔵の特別授業 佐渡から考える島国ニッポンの未来』

2015年12月25日

私が学級委員を務めさせていただきました「学校蔵の特別授業」では、佐渡島、東京、他地域、海外からとそれぞれ世代も立場も違う人たちが一つの教室に集まりました。

世代も立場も超えた老若男女が集まった空間は、まるで都会からの転校生や社会人聴講生、海外留学生が入り混じった教室のようでした。そこで起きたことは拒絶や無関心ではなく、みんな、自分以外の「あなた」の存在を考えながら言葉を発していました。

例えば、高校生が「自分はきれいだと思わない田んぼの風景が、東京から来た大人にとってはきれい」だと知り、佐渡島の自然に対する考え方が変わったと言います。また、ある高齢者は、地域が寂れていくのは今さら止めようがない、と諦めていたのが、若者を目の前に「しっかり次につなげていこう!」と奮起したそうです。

つまり、「自分の未来」だけではなく、「あなたの未来」を想像することによって小さな化学反応が起き、考えや行動が変化したのです。

教室にいる一人ひとりが、欠けてはいけない大事な存在でした。パズルのピースのように、誰もが役割を持ち、支え合う。この実感は、きっとお金では買えないものだと思います。もしかしたら、そういう実感を上手に引き出す場所が学校蔵であり、地方なのかもしれません。

学校蔵の校訓は「幸醸心(こうじょうしん)」。“幸せを醸す心”です。「幸せ」とはなんだろう? 私は学校蔵プロジェクトを始めてから、時々そんなことを考えるようになっていました。

その答えが、授業を通してちょっと見えてきたように感じています。

少し照れくさいのですが、それは「あなたがいる幸せ」です。学校蔵で多くの人と出会い、ともに課題に向き合い、考え、また会おうと手を振ってそれぞれの場所に帰っていく。地方も都会も国境も越えて、かけがえのない多くの「あなた」がいることに、私は大きな幸せを感じました。

この幸せを醸す心を、「学校蔵」で育てていければ素敵なことです。そして私たちはその幸せをつなぐお酒を、ここで醸し続けていくのです。

「真野鶴」五代目蔵元 尾畑留美子

書籍『学校蔵の特別授業 佐渡から考える島国ニッポンの未来』

尾畑留美子 著
価格:本体1600円+税

3人の識者

  • 地方と経済

    都会と地方、ではなくて元気な地域とダメな地域に変わる
     ――藻谷浩介・日本総合研究所主席研究員

  • 地方と仕事

    佐渡の課題解決に仲間として取り組む学校蔵プロジェクトなら移住しやすい
     ――酒井 穣・BOLBOP代表取締役CEO

  • 地方と希望

    昔は地方から都会に出ていく物語だったが、今はそうではない気がする
     ――玄田有史・東京大学社会科学研究所教授