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野菜を巡るホントウの話

有機栽培=旨いとは限らない

2009年6月23日

最近、有機野菜をウリにした店をよく見かける。有機野菜とは、JAS法によれば、「化学的肥料や農薬を使用しないことを基本とし、完熟した堆肥などで土作りを行った農法で、単年作物においては2年以上、永年作物については3年以上経過したもの」のこと。

多くの人は、有機野菜は一般的な農法で栽培されている野菜に比べ、安全性や栄養面、味の点で格段に優れている、だからこそ値段が高いと思いがちだが、必ずしもそうとは限らない。

一般野菜より糖度が低いもの
硝酸態窒素が多いものもある

実際に有機野菜と一般の野菜の糖度を比べてみると、変わらないことも多いばかりか、後者の方が糖度が高くて美味しいこともある。有機JAS認証は化学合成の農薬や肥料を使用しないことを決めているだけで、美味しさを求めているわけではないからだ。

また、安全だと思われている有機野菜だが、発ガン性が疑われる硝酸態窒素が多く含まれていることも多々ある。

作物の糖度や硝酸態窒素の含有量の決め手となるのは肥料の量や水分だが、有機栽培は、この量の加減や施肥のタイミングが難しい。気温が低過ぎたり、乾燥した日が続いて地中の水分が減ると土壌中での分解が遅く肥料がきかないため、生産技術が未熟な人は多めにまきがちとなる。そのため硝酸態窒素が増えるわけだ。

そもそも有機野菜を高値で販売する人の中には、経験が浅く、生産技術が未熟なまま差別化のために有機に取り組んでいる人も少なくない。これも「有機=優れている」とは言えない原因だ。

生産技術の低さが高値の一因
“泥付き信仰”も捨てるべし

手入れの行き届いた畑には、枯れた葉は紛れてない

例えば、名人と言われる人はまず植物をよく観察でき、水や肥料の過不足、植物の生理、病害虫など重要なポイントも押さえていて、無駄な動きがない。周囲の雑草や虫食いのある葉をこまめに取り除くなど、畑もきれいに保っている。こんな名人が有機農業に取り組めば美味しい野菜や果物が採れるだろうと思うが、彼らは有機農業に対して関心を示さない。わざわざ有機をうたわなくても十分に美味しい農産物を生産しているからだ。

これに対し、有機栽培を始めたばかりの人たちの畑にはがっかりさせられることが多い。野菜を虫から守るには草取りなど栽培環境を整えることが大切なのに、畑は草だらけ。気が付いた時には虫の被害が広がっている。収穫量も減るので、高値の割に質が良くないという事態に陥ってしまう。

人参や大根は土付きでない方が傷みにくくて良い

こう考えると、有機栽培だからといって必ずしも優れているとは言えない。飲食店も、有機農産物に対して正しい知識を持つ必要がある。例えば、有機栽培や新鮮さを強調するために、わざと土や葉を付けたまま出荷することがあるが、これはあまり意味がない。確かにサトイモやゴボウ、ネギなどは土付きの方が鮮度が保たれるが、大根や人参などは洗ったものの方が土壌菌が少なく衛生的で、傷みにくい。イメージだけで判断しないようにしたい。

中村 敏樹氏

農業コンサルティング会社社長。国内外の生産技術に通じ、農家の指導や外食向けの食材コンサルティングを行う。日本ベジタブル&フルーツマイスター協会講師