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野菜を巡るホントウの話

完熟させれば栄養価は数倍に(前編)

2009年6月30日

野菜に含まれる糖分や栄養分の量は旬の時期の野菜かどうか、あるいはハウス栽培か露地栽培かなどによって変わるが、それだけでなく、「どんなタイミングで収穫するか」によっても変わる。

完熟トマトのリコピンは
青いまま収穫したものの5倍

例えば、抗酸化作用の高さが注目されているリコピン(カロテンの1種)を豊富に含むトマト。トマトのリコピン含有量は右のグラフでも明らかな通り、青いうちに収穫して後で色付かせたものより、畑で完熟させたものの方がはるかに多く、5倍以上にもなる。旨みの指標であるグルタミン酸の量も、樹上で完熟したものの方が1.7倍も多い。店頭に並ぶ時には同じような赤い色をしているが、どのようなタイミングで収穫・完熟させるかによって“中身”はこうも違ってくるのだ。

しかし、実際に市場に流通している夏トマトは、青いうちに収穫し、流通の過程で赤く色付かせるものが多い。こうしたトマトは果肉にも皮にも弾力があり、輸送の途中で潰れることはまずない。これに対し、畑で完熟したトマトは、果肉が軟らかいため流通の過程で傷みやすい上、店頭に並んだ後の“持ち”もよくない。つまり、青いうちに収穫する方が、売る側にとって都合が良いのである。

中村 敏樹氏

農業コンサルティング会社社長。国内外の生産技術に通じ、農家の指導や外食向けの食材コンサルティングを行う。日本ベジタブル&フルーツマイスター協会講師