「日経レストランONLINE」は、「日経レストラン」の休刊に伴い、3月末日をもって更新を休止することになりました。長らくご支援を賜りました皆様に厚く御礼を申し上げます。

野菜を巡るホントウの話

特別栽培は 「特別」じゃない

2009年8月18日

野菜売り場などで時折、「特別栽培農産物」と書かれた野菜を見かける。大抵、一般の野菜より高値で売られているが、この特別栽培、必ずしも「特別」といえないことをご存知だろうか。

特別栽培とは、その地域の通常の栽培方法(慣行)より農薬と化学肥料を50%以下に減らして栽培した野菜をいう。使用基準は、右表のように地方公共団体ごと、野菜の種類別に設定されており、例えば右表のA県南部産のキャベツの場合、化学肥料の窒素成分が10a当たり6kg、農薬使用回数が12回以下だと特別栽培の基準を満たす。

こう見ると、特別栽培のほうが一般の野菜より農薬や肥料が少なく、「安全=特別」と認識しがちだ。確かに、同じ産地の野菜同士の比較なら、それはいえる。しかし、これには大きな落とし穴がある。都道府県によって、慣行レベルの設定が異なるのだ。

農薬使用が6回でも「×」で、
20回でも「○」の差はどこから?

例えば、ある県ではキャベツの慣行の農薬使用基準が10回のため、実際の使用を6回に減らしても特別栽培を名乗れないのに対し、別の県では慣行の使用基準が40回のため、実際の使用回数が20回でも特別栽培を名乗れる、ということが実際に起きているのだ。

本来、レタスなら秋、キャベツなら冬と、旬の時期に栽培すると、農薬はほとんど必要ない。このため旬の産地では農薬などの使用基準が低いが、旬を外して栽培する地域では、野菜が病気や害虫の被害を受けやすいため、農薬の使用基準は高くなる。その結果、旬の野菜は農薬が少ないにもかかわらず市場に多く出回るため高値が付かないのに対し、旬を外した野菜は、農薬が比較的多いにもかかわらず特別栽培として高値で売れるという矛盾が生じるわけだ。

また、特別栽培ではないからといって農薬や肥料を沢山使用しているとも限らない。実際には特別栽培の基準を満たしながらも、手続きの手間からあえて特別栽培を申請しない農家も少なくない。

つまり特別栽培かどうかは、農家の申請があるかないかだけの違いであり、品質の高さを保証する絶対的な基準とはいえないのである。むしろ、特別栽培か否かに惑わされず、旬に関する正しい知識を持つことが、安全で美味しい野菜選びの近道といえる。

中村 敏樹氏

農業コンサルティング会社社長。国内外の生産技術に通じ、農家の指導や外食向けの食材コンサルティングを行う。日本ベジタブル&フルーツマイスター協会講師