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野菜を巡るホントウの話

長く育てるのが美味しさの条件

2009年8月25日

桃、ミカン……。いずれも極早生と晩生では糖度がかなり違う

すべての野菜や果物には、同じ品目でも極早生(ごくわせ)、早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)と、収穫時期が異なる品種がある。この極早生や早生といった違いは、野菜では種をまいてから収穫までの早さによって、果物では、春に花が咲いて野菜が熟すまでの期間によって決まる。

こうした収穫時期の異なる品種がもし存在しないと、その農産物が1年の中で限られた時期にしか収穫できないことになってしまう。そんなことがないようにと品種改良を行い、極早生や早生などの品種ができたおかげで、今では同じ農産物を長い間楽しむことができるようになっている。

じっくり育てた
中生、晩生の方が美味しい

例えば枝豆であれば、極早生の品種が6月後半から出始め、晩生の丹波の枝豆は10月に入ってから出荷されてくるといった具合だ。

これ自体はありがたいことだ。しかし、早出しをすることで高く売れるため、それだけを目的に、極早生や早生の品種を栽培し、さらにもっと出荷できるようにとビニールをかけるなどして育てる農家は多い。これには大きな疑問を感じる。

というのも、果物や野菜は長い期間をかけて育てることが美味しさのカギだからだ。極早生、早生や、温室育ちの農産物は確かにスクスクと形は立派に育つが、味が薄くなる傾向にある。

果物の場合、花が咲いてから果実が熟すまでの期間が長いほど糖度が高くなる傾向があり、晩生の品種ほど総じて糖度が高い。

ところが多くの農家が端境期を狙って極早生や早生を作るため、あまり美味しくない商品が出回り、最終的にその果物に対する消費者の購買意欲を削ぐ結果につながっているように見える。これは、非常に残念なことだ。

その意味で、9月頃に出回る皮の青い青切りミカンはあまり褒められたものではない。

ミカン離れの原因は青切り!?
桃もお盆過ぎこそ旨い

普通のミカンは糖度が11度程度あるのに対し、青切りミカンは8~9度程度。酸が低いためすっぱくは感じないが、ミカン本来の美味しさとはとてもいえない。ミカンの消費にブレーキをかける要因となっているとも思える。

桃も、極早生は6月頃から出回り始め、その頃からお盆前までは高値で売れるが、実はそれを過ぎたあたり、8月頃に出てくる晩生の品種の方が甘くて美味しい。また洋ナシも、8月、9月に採れる早生品種は、収穫後の気温が高いことから追熟がうまくいかず、消費を落とすことにつながる。

飲食店でも極早生や早生を“走り”のものとしてありがたがる傾向があるが、高いだけの野菜や果物より中生や晩生の品種に目を向けた方が、より安く美味しい農産物を提供できるし、消費者の野菜・果物離れを食い止めるのにも貢献できるのではないだろうか。

中村 敏樹氏

コスモファーム社長。国内外の生産技術に通じ、農家の指導や外食向けの食材コンサルティングを行う。日本ベジタブル&フルーツマイスター協会講師