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野菜を巡るホントウの話

「採れたて」は本当に旨い?

2009年9月8日

「採れたて野菜」に「朝採り野菜」。最近、こうした売り文句をよく耳にするが、これらは本当に美味しいのだろうか。答えは、おおむねイエスだ。

まず、採れたて野菜について。農作物の美味しさを左右する要素はいろいろあるが、「鮮度」は中でも重要な要素だ。野菜は、収穫後も呼吸や蒸散を行っている。それによって、蓄積された栄養分が消費され、時間が経つほどに鮮度は落ち、味も低下するのだ。

鮮度の劣化が著しい野菜の代表格が、スイートコーンやアスパラガス、枝豆だ。これらに共通するのは、甘さが重視されるということ。甘さの基である糖度は鮮度の低下により失われやすく、だから味が落ちやすいというわけだ。

例えばスイートコーンは、収穫から2日経つと糖度が2度以上低下(20℃で保管の場合)。枝豆も、20℃で2日置くと、アミノ酸、糖分ともに収穫直後の50%程度にまで落ちる。

もちろん、鮮度保持の具合は保管の仕方によっても大きく異なる。枝豆は、残さや手間の簡便性からさやの状態で流通することが多いが、枝付きや根付きであれば糖度やアミノ酸の減少はかなり遅く、美味しさを維持できる(左下グラフ)。スイートコーンも、水平に置くと糖分が1日で3%減るのに対し、畑で育っているのと同じ垂直で保管すると1%しか減らない。つまり、流通方法や保管方法も美味しさ維持のポイントになるというわけだ。

ただし、新鮮さと美味しさが連動しない農作物もある。カボチャやジャガイモ、バナナ、キウイ、洋ナシなど、デンプンを含む野菜や果物だ。これらは、貯蔵することで、蓄積されたデンプンが糖に変化し甘味を増す。例えば、北海道のジャガイモは、9~10月に収穫された直後はデンプンが多くてホクホクし、それはそれで美味しいが、1月頃になるとデンプンが糖に変わり、ネットリと甘くなる。洋ナシも9月初旬に収穫し、4℃で1週間締めた後、20℃で1~2カ月置くとようやく食べ頃になる、といった具合だ。

朝採り野菜には
前日に貯まった養分が一杯

次に朝採り野菜についてだが、朝収穫したものが日中や夕方に収穫したものより美味しいのも、理にかなっている。

農作物の美味しさの決め手の一つは同化養分の量。前日の光合成で作り出された同化養分は夜間の低温にさらされることによって植物体に炭水化物として蓄積される。朝採りの野菜にはこの炭水化物が十分に蓄積されているため美味しいのだ。日昼や夕方に収穫したものは、植物の呼吸作用が激しくなり、蓄積されていた同化養分を消費してしまうため、鮮度も味も落ちてしまう。

最近は農家から野菜を直接仕入れる店が増えているが、「産直=美味しい」とは限らない。どんなタイミングで収穫されたか、きちんと鮮度管理がなされているかまで目を配らなければ、美味しい野菜を手にすることはできない。

中村 敏樹氏

コスモファーム社長。国内外の生産技術に通じ、農家の指導や外食向けの食材コンサルティングを行う。日本ベジタブル&フルーツマイスター協会講師