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野菜を巡るホントウの話

誤ったこだわり持ってません?

2009年9月29日

仕事柄、レストランの厨房を訪れる機会が多い。焼き鳥店からフレンチまで様々な厨房を見るが、驚くのは意外に汚く、納品された食材の扱いもかなり悪いところが多いことだ。それも、食材にこだわっていると標榜する高級なレストランでさえ、そうだったりする。

納品された野菜や果物が、外の階段に放置されていたり、温度の高い厨房に置かれたり……。これでは、生産段階から流通・納品までコールドチェーン(低温流通体系)を組み立て、鮮度や品質にこだわりながら運んできた努力が台無しだ。張りがなくなったナス、しなびた人参などを見るたびに、残念な気持ちになる。

店側は「どうせ今日中に使うのだから、少しぐらいいいだろう」という軽い気持ちなのだろうが、野菜には種類ごとに適切な保管温度があり、たとえ短時間であっても、温度が高過ぎたり、低過ぎると鮮度は落ちる。特に週の後半は、業者によっては週初めに仕入れた野菜を売り切ることもあり、そうした野菜は既に新鮮ではないので余計いたみやすい。肉や魚は食中毒の心配があるせいか冷蔵庫での保管が当たり前になっているが、野菜や果物の扱いにも気を配ってほしい。

国産にこだわるあまり
季節外れの食材を使う店も

発注などのやり取りを通じて、野菜や果物に関する料理人の知識の乏しさに驚くことも多い。これまで何度も書いてきた通り、野菜は旬の時期が最も美味しい。それなのに、秋からのメニューに季節外れのアスパラガスを入れたり、年末のメニューにふきのとうやタラの芽を使う店が少なくない。

そうした店に限って、「国産にこだわっています」などとうたっていることが多く、例えば秋や冬にも平気な顔をして国産のアスパラを注文してくるが、もちろん秋冬は国産のアスパラの旬ではなく、味は格段に落ちる。今の時期にアスパラを使うなら、季節が逆のニュージーランド産のほうが美味しいのに、そうしたことも知らぬまま、「国産」を唱え続けるのはいかがなものか。厨房の仕事が多忙なのは分かるが、せめて旬ぐらいは理解する必要があるだろう。

もう一つ、“こだわり”がらみで呆れるのは、いかにも素材にこだわっているような話をしながら、手間が省けロスが少ないカット野菜を使ったり、玉ネギやジャガイモは、当然のように皮をむいた状態で納品するよう要求して来る店が多いことだ。

しかし、玉ネギの皮むき作業はほとんどが中国で行われており、加工段階から使用されるまでの経過時間が長い分、そうした野菜は日持ちが悪い。それに、玉ネギやジャガイモは外観で品種や品質が判断できるのに、皮がない状態で仕入れては、毎日の食材の微妙な変化にも気が付きにくい。効率を追求することを否定はしないが、それならば素材へのこだわりを安易にうたわないなど、一貫した態度を取る必要があるだろう。

中村 敏樹氏

農業コンサルティング会社社長。国内外の生産技術に通じ、農家の指導や外食向けの食材コンサルティングを行う。日本ベジタブル&フルーツマイスター協会講師