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野菜を巡るホントウの話

寒さこそ美味しさの元(前編)

2009年11月10日

これから旬を迎える秋冬野菜。大根などは夏でも一部地域で露地栽培していますが、夏大根と冬大根では明らかに味に差があります。その違いの鍵を握るのは、水分と炭水化物です。

冬に旬を迎える野菜は寒さが増すにつれ生育速度が遅くなり、細胞が小さく緻密になります。その結果、冬大根は身が締まって感じ、逆に夏大根は少し水っぽく思えるのです。

また、気温が低くなるにつれ、野菜自体が寒さへの抵抗性を強めることも影響しています。これは「ハードニング」という現象です。寒さが増すと、植物は細胞液の濃度を濃くして凍害から身を守ろうとします。すると、細胞液中の炭水化物の濃度が増し、甘みが増えます。だから、冬野菜は気温の低い時期の方が美味しいというわけです。ハードニングの影響が出るのはホウレンソウなどの葉物も同じで、寒さが強くなるほど味が濃くなります。

一方、冬が旬でも収穫を早めるためにハウス栽培したものは、見た目はきれいですが、生育が速い分、味は薄くなりがちです。逆に露地物の葉物野菜やブロッコリーは、寒さでアントシアニンやポリフェノール成分が増えるため紫色に変色します。見た目が悪い分、市場価値は下がりますが、実はこれは美味しさのマークです。見た目を気にせず、紫色の方を選びましょう。

大根

細胞が密な方が美味しいので、重いものを選ぶ。葉を付けたままにしておくと栄養価や味が落ちるので、葉は早めに切り落とすこと。辛みの程度を知るには、下部にある側根の出た跡に注目。並びが斜め(写真上側)だと、辛味発生酵素のミロシナーゼの活性が高く、辛さが強い印。比較的真っ直ぐだとそれ程辛くない。

中村 敏樹氏

農業コンサルティング会社社長。国内外の生産技術に通じ、農家の指導や外食向けの食材コンサルティングを行う。日本ベジタブル&フルーツマイスター協会講師

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