
日本の食文化を見直して道を切り開く
佐竹力 総 美濃吉社長
佐竹力 総 美濃吉社長
1946年、京都生まれ。70年、立命館大学法学部卒業後、美濃吉入社。74年、米国サンフランシスコ市立大学ホテル・レストラン学部卒業。76年、美濃吉常務に就任。95年、社長に就任、現在に至る。日本フードサービス協会会長、京都府料理生活衛生同業組合理事長などを務める
2011年は、東日本大震災や長引く世界不況など、外食業界にとっては厳しい年でした。2012年をスタートするに当たって、日本の食文化の良さをもう一度見つめ直すことを提案したいと思います。日本の食文化の良さを、改めて外食サービスの現場に取り込んでいくのです。
我が国の食文化には、おもてなしの心が息づいています。日本人は、四季を愛でる心を持っていて、一枚の葉が落ちるのを見ても、季節の変化に気付きます。こうした繊細さがあるので、相手を細やかに気遣うことができるのです。この気遣いが、工業製品などのモノ作りにも生きています。料理も同じです。この点が外国人から評価されているのです。
最近の外食産業は、効率化、低価格化を追い求めるあまり、お店の内装もサービスも均一化してしまい、すっかり個性が無くなりました。同時に、日本の食文化が本来備えているはずのおもてなしの良さが影を潜めてしまったように感じます。安く食事ができて喜ぶお客様もいらっしゃいますから、効率化、低価格化はもちろん大切です。しかし、それが日本の食文化を豊かにしているかというと疑問です。
美濃吉は、料理とおもてなしを通して、京料理の文化を楽しむ食空間を提供してきました。こうした付加価値の部分こそが、これからの外食産業を活性化する鍵になると思うのです。飲食店のほとんどは、小規模の個人店です。個人店は、規模拡大を目指して、効率化、低価格化を追求しても大手に勝つのは難しい。むしろ、自分の目の届く範囲で、お客様に質の高い料理とサービスを提供することが、これからの個人店が生き残る道だと思います。
お客様も、効率化、低価格化一辺倒のサービスに満足しなくなっています。おもてなしの心を大切にしながら、自店の長所を掘り起こして、それを伸ばす。そして、時代の変化に対してアンテナを張りながら、QSCを磨き続ける。これができれば、自ずと常連客が増えていきます。この飲食店の基本を守っていけば、今後は大手よりも、むしろ個人店が生き残る可能性が高いと思っています。
2012年も、世界経済の状況を考えれば、依然として景気が良くなる兆候は見られません。少子高齢化によって、国内の市場はますます縮小していきます。今後、飲食店が業績を維持するには、海外に進出するか、外国人観光客の需要を取り込むことが重要になります。
当社の店舗へ海外から多数の来客があるほか、日本フードサービス協会(JF)の会長を務めていることもあり、外国人のお客様と接することが多いのですが、日本人が想像している以上に海外での日本食に対する評価が高まっていると感じます。
JFでは、海外で日本食をアピールする取り組みに力を入れています。海外での認知度が高まれば、日本の食文化を楽しみたいと思う観光客がさらに増えるはずです。そうなれば、日本ならではの料理とおもてなしに磨きをかけた個人店にとって、大きなチャンスになるでしょう。
(写真=新関雅士)
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